6. 胸膜中皮腫・腹膜中皮腫等の初期症状、臨床所見

What is Mesothelioma?

 胸膜中皮腫は、初期は胸部X線写真でわずかな胸水を肋骨横隔膜角に認めるのみで無症状です。吹付け石綿業、石綿除去業、石綿製造業の年1回の定期健康診断を担当していると、数年に1回は胸部X線写真でわずかな胸水を発見し病院の呼吸器科で精査をお願いすると中皮腫ステージⅠ~Ⅱと判明します。ステージがⅢ期以上に進行すると、労作時の呼吸困難はほぼ生じ、胸痛や胸部圧迫感が起こります。労作時の呼吸困難は胸膜中皮腫でほぼおきる症状ですが、酸素の吸入で改善します。酸素を吸いながら旅行にでかけたり自転車に乗っている患者さんを数多くみてきました。

 不眠やうつ状態は重篤な疾患のため、初期からおきる症状です。「眠れない」「ゆううつだ」「不安だ」という当たり前のことを主治医に伝えて、適切な内服で改善しましょう。

 胸痛は手術後の方にはゼロではない自覚症状ですが、程度は千差万別と思います。低気圧通過時に感じる方から、かなり激痛の方までおり、内服や麻酔科のペインクリニックで治療を受けて概ね改善しています。手術をしていない方で高齢で胸痛が最後までゼロの方もいますが、ある程度の胸痛を伴う方が多く見受けられます。WHOが推奨している痛みのコントロール方法に従って、鎮痛剤の内服から開始し麻薬の内服(依存性はほぼないのでご安心ください)で痛みのない生活を最後まで送っている方が殆どです。痛みのある方は、主治医に痛みを言わなかったり、言いにくかったりする場合が多いので、病院の医療相談室でケースワーカーに相談したり、セカンド・オピニオンを上手に活用してください。腫瘍熱、体重減少、倦怠感は胸膜中皮腫が進行すると一定の割合でおきる症状です。

 腹膜中皮腫では、進行すると腹部膨満、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、腹水、腸閉そくを起こすことが多いのが特徴です。

(本項目の文章は2018年8月段階の内容です。2018年9月以降の変化は反映していない場合がある点ご了承ください。)