10. 胸膜中皮腫の一般的な予後と生存率

What is Mesothelioma?

 がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものを転移といいます。転移とは異なり浸潤は、発生した部位自体や周囲臓器に組織層を越えて拡がり、周囲の健康な組織と臓器に連続して増殖するがんの進展です。

 中皮腫は、左胸膜から右胸膜、右胸膜から左胸膜、胸膜から腹膜・心膜、胸膜から肺内と隣接部位に浸潤することが基本の悪性腫瘍で、転移は稀な悪性腫瘍です。

 中皮腫は手術で全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に浸潤している可能性があり、少し時間がたって浸潤・転移が見つかることがあります。

 中皮腫の場合、完全に手術等で取り切れた方はごく一部です。再発といってもそれぞれの患者さんでの状態は異なります。それぞれの患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。再発や転移、痛みが強いときの治療については、国立癌センターのHPを参考にしてください。「患者必携がんになったら手にとるガイド

 中皮腫は臓器転移を起こすことはほとんどないものの、診断時にすでに広範囲に進展し、根治手術が不可能であることが多く、2010年以前の予後はきわめて不良で1年生存率が50%、2年生存率が20%といわれていました。

 2010年以前は中皮腫の予後は、平均で1.3年前後の論文が多かったのですが、肺胸膜全的術と、抗がん剤治療と放射線療法を組み合わせた、山口宇部医療センターの岡部先生が、日本でも国際的に評価される「生存期間中央値18.5か月」「5年生存率32%」の結果を近年報告され注目されています(下記は2016年時点の結果です)。

図5 胸膜肺全摘術(EPP)の結果

胸膜中皮腫の治療 手術(外科治療)と生存率について

(本項目の文章は2018年8月段階の内容です。2018年9月以降の変化は反映していない場合がある点ご了承ください。)