What is Mesothelioma? (Digest)
中皮腫(ちゅうひしゅ、英: Mesothelioma)は、中皮1)細胞由来の悪性腫瘍の総称です。「がん」の表現を使用しないのは、上皮由来の悪性腫瘍ではないからです。中皮腫の発生部位には、胸膜、腹膜、心膜、精巣漿膜の4部位【図2】があり、約9割前後が胸膜中皮腫とされています22)。石綿(アスベスト)関連疾患の国際的診断基準で最も信頼されている規準が、ヘルシンキ基準19974)、ヘルシンキ基準20145)です。ヘルシンキ基準1997は、「中皮腫のほとんどが石綿(アスベスト)が原因であり(The great majority of mesotheliomas are due to asbestos exposure)4)、中皮腫の80%が職業性石綿ばく露4」 (About 80% of mesothelioma patients have had some occupational exposure to asbestos, and therefore a careful occupational and environmental history should be taken.)と記載しています。
中皮腫の原因として、石綿(アスベスト)以外に、放射線同位元素のトロトラスト3,7)、医療用放射線3)、トルコで算出される線維性鉱物エリオナイト3)、10歳以下の遺伝的中皮腫6)、等が知られています。石綿以外の中皮腫の報告数は数例~10例単位と少数で、中皮腫のほとんどがアスベスト(石綿)由来です。
中皮腫の病理診断は、HE染色と免疫染色8)で行われています。中皮腫には、上皮型、肉腫型、二相型、特殊型の3~4つの組織亜型8)があります。また中皮腫がどの範囲まで浸潤しているのかで病期(ステージ)分類9)がⅠからⅣまで分類されています。
中皮腫の治療は、中皮腫のステージ、組織亜型、年齢、他の疾患の有無等を総合的に判断して、手術、抗がん剤、放射線療法、緩和ケア10)を組み合わせた治療が行われています。
抗がん剤として世界的に証拠のある治療方法は、CDDP(商品名シスプラチン)とPEMETREXED(商品名アリムタ)の併用療法で生存期間を無治療を比較して3か月以上延ばすことが判明しています11)。手術単独での生存期間延長の証拠はありませんが、肺胸膜全摘出術+抗がん剤+放射線療法の3者併用で効果を示した論文が幾つか知られ、日本では宇部医療センターの岡部和倫医師の論文が有名です(後述)12)。放射線療法は緩和的効果が主で、生存期間延長効果を示した論文はないようです。緩和ケアは病名告知時点から行うことが望ましいとWHO等でもされています。予後の悪い方が多い現実ですが、上皮型がおおいのですが腹膜中皮腫や胸膜中皮腫で10年以上生存された方も少数いるので、手記をご参照下さい13)。腹膜中皮腫は、標準的治療方法が決められていない状態です。各病院で胸膜中皮腫の治療に準じた抗がん剤の投与、腫瘍の量を減らし腸閉塞を防ぐ手術療法等が行われています。上皮型の腹膜中皮腫で長期にお元気な方が一部でいることが経験的に知られています。
石綿と関連のない中皮腫(胸膜中皮腫・腹膜中皮腫)はごくわずかです。医療費の負担が全くなく、その他の補償も受けられる労災補償となる方が多い多い疾患です。困られた方は、是非相談フォームからご相談ください。
(写真 悪性胸膜中皮腫CT像)
(本項目の文章は2018年8月段階の内容です。2018年9月以降の変化は反映していない場合がある点ご了承ください。)