石綿関連疾患の診断・ケア・飛散防止対策 石綿関連疾患総論(5/12)

Lecture by Dr Natori 2005

石綿関連疾患総論(5/12)

 これは石綿小体です(25)。光学顕微鏡で見えるものです。芯は石綿繊維で、周りはタンパク質と鉄が沈着して茶色に見えます。石綿(アスベスト)小体は、アモサイトとクロシドライトでは多くできますが、クリソタイルは石綿(アスベスト)小体を作りにくいので、クリソタイルのばくろの指標にはなりません。今後はクリソタイルばくろの方が増えてくるので、石綿(アスベスト)小体でのアスベスト曝露評価は今後難しくなります。石綿小体が1本あるということは、ここの裏に数万本の単位で電子顕微鏡で見える石綿の繊維があるということになります。


 石綿関連肺がんは潜伏期が長いのが特徴です(26)(27)。私の横須賀共済病院時代の1980年代後半の、石綿関連肺ガンのデータです。例えば発症時のお仕事は八百屋さんだったという方を、普通の肺がんとして手術をすると石綿小体が出てくる。昔いろいろアスベストを吸われませんでしたと聞くと、戦前は海軍工廠(こうしょう)で船の修理をしていたという。1940年以前に石綿(アスベスト)ばく露で発症した方を、1980年台私たちは診ていました。1980年代に論文を読むと、アメリカやイギリスは1950〜1960年代から造船所でアスベスト対策を始めており、日本の造船所ではほとんどアスベスト対策をしていない時期でしたから危機感を覚えました。

 また1980年代のアメリカやイギリスは、「アスベスト被害は造船でなく建築だ、建築の石綿飛散を急いで防がないと大変なことになる。」と言っていました。日本も大変なことになると思いつつ、時に働きかけても報道もわずかしかされない頃で、石綿肺がんや中皮腫の方を治そうと日々抗がん剤の治療に取り組んでいた事を思い出します。

 アスベスト関連肺がんのレントゲン写真です(28)。

 アスベストばく露をしていない方を1とすると、タバコを吸うと10倍、職業性アスベスト曝露をすると5倍、両方で50倍という、アメリカの断熱工の調査結果です(29)。民族差等もあるのか、日本では同じ数値にはなりませんが、基本的に石綿(アスベスト)と喫煙が相乗作用があることを示した、非常に有名なデータです。

 最近よくある建築の方の肺がんです(30)。大学病院では、たばこによる肺がんと説明されていました。こういう場合、私は患者さんと一緒に外来についていき、「すみません先生」と言って病理標本を借りてきます。肺を溶かすと石綿小体がたくさん出てくる。タバコによる肺がんではなくアスベストによるものだという事になります。今後は減るでしょうが昔は、「アスベストによる肺がんはない。」と断言される先生もおられ一人ひとりに、「先生、アスベストによる肺ガンもあります。」とお話して廻った時期もありました。

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