石綿関連疾患の診断・ケア・飛散防止対策 石綿関連疾患総論(4/12)

Lecture by Dr Natori 2005

石綿関連疾患総論(4/12)

 石綿の危険は、飛散性の違いと吸入した時間で異なります(19)。吹き付けの石綿は1番危ない。但し十分調査がすんでいないものも一部にある。2番目に保温材やフェルト材や煙突材が危ない。3番目の石綿建材でも、経年劣化のあるものと、それ以外のものでは危険性が違います。対策のない吹付け石綿(アスベスト)は、そこにあるだけで飛散します。しかしボード等の石綿建材は、建物の内部に通常であるだけで問題となるわけではない。石綿(アスベスト)建材は、改築・解体の時が危ないのです。石綿無含有の建材もありますが、肉眼ではその違いが1級建築士でも石綿除去のプロでも分からないところに、石綿(アスベスト)問題が複雑となる背景があります。

 ここからアスベストによる健康障害の話をします(20)。

 この図は、1975年ボーリッヒ氏が、石綿(アスベスト)鉱山や石綿工場等の石綿濃度が高濃度の職業性環境の集団をみて、石綿(アスベスト)濃度と潜伏期の関連をまとめた概念図です(21)。30年たった日本の現在は高濃度の集団は稀で、中等度から低濃度の職業性曝露の集団が主ですので、石綿(アスベスト)曝露量も少なく、潜伏期は40年前後に延長している訳です。この図より右下にシフトしているとお考え下さい。

 主に職業性でしかならないとされるのが、じん肺のひとつ石綿肺です。石綿(アスベスト)肺は、吸入してから比較的早い時期に起こり始めるのが特色です。濃度が低くても潜伏期が短くて早期に起きてくる良性病変に、胸膜肥厚斑(この図では胸膜プラーク、硝子化とされていますが、同じ意味です。)があります。肺ガンや悪性中皮腫が起きる前に、良性病変の胸膜肥厚斑がおきるので、職業でも環境曝露でも胸膜肥厚斑が出現する集団には、しばらくすると悪性中皮腫もしくは肺がんが発症してきます。胸膜肥厚斑は、人が病気になる濃度の前に泣く「カナリア」の様な役割もある訳です。

 胸膜肥厚斑ですが、後で他の先生から詳しくお話があるでしょうから、簡単に説明します(22)。

 胸膜肥厚斑というのは、壁側の胸膜直下にまだら状に起きる良性の病変で、正常部と異常部がまだらにおきます(23)。上の左の写真は胸を内側から見ていますが、白〜黄色の部分が胸膜肥厚斑で、赤い部分は正常の肋間筋です。胸膜肥厚斑のある部分の壁側胸膜は正常に1層保たれていまして、胸膜下の繊維増殖性変化という事になります。石綿を吸入した証拠の一つですか、症状もなく治療する必要も特にありませんので、疾患とせず「病変」とする事も多いかと思います。

 結核やウイルスや細菌で生じる胸膜炎の後遺症として起きる、まだらでない胸膜肥厚とは違うものです。胸膜肥厚と書いた検診結果を持って、心配になって外来に来る方が大変増えていますが、石綿で起きるまだらの「胸膜肥厚斑」と、それ以外の原因で起きる「胸膜肥厚」とは全く違うという説明が必要です。後述する「びまん性胸膜肥厚」も同じ石綿関連疾患ですが、病像も範囲も胸膜肥厚斑とは異なるものとなります。

 正常部との移行が、クッション状で台形状になるのが石綿による胸膜肥厚斑で、「なだらか」に移行するのは他の炎症性の胸膜肥厚です(24)。部位では、石綿の場合は前胸部や側胸部にも出現しますが、他の胸膜肥厚は主に背部のみに出現します。部位と正常部との移行をみれば、ほとんどの場合は鑑別がつくと思います。

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