第2部 講演「吹き付け石綿除去工事 現在必要な方法と課題」

Symposium Summer 2006

 今後の取組みについて説明します。ジョイントシート、シール材、耐熱・電気絶縁板、石綿布など、まだ禁止されていない石綿含有製品があります。

 これらの製品についても代替化を進めるため、昨年の8月から検討会で専門家による検討を行い、その報告書が本年1月18日に取りまとめられました。

 その報告書の概要ですが、1点目が「アスベスト製品の製造等を禁止する」、2点目が「新規の設備についてはアスベスト製品の使用を認めない」、3点目が「ただし、国民の安全の確保上、既存の化学工業設備、鉄鋼業施設、非鉄金属製造業施設の設備の接合部分に用いられるガスケット又はパッキンであって、温度、圧力が一定以上のもの等については、例外的に製造等認める。(ポジティブリスト化)」となっています。


 報告書の内容を踏まえ、労働安全衛生法施行令の改正を行い、平成18年度中に施行することとしています。


 また、規制対象となる石綿等について、現在の石綿をその重量の1%を超えて含有するものから、0.1%にすることを検討しています。

 また、石綿則の改正を考えています。石綿則については、昨年7月から施行されているところですが、関係者からヒアリング等により明らかになった作業の実態の知見を踏まえ、吹付け石綿等の封じ込め、囲い込みの作業等におけるばく露防止対策の充実を図るため、所要の改正を行うものです。

 4点の改正を考えています。

 1点目は、吹付け石綿等の封じ込め、囲い込みの作業に係る措置です。石綿則第10条においては、建築物に吹き付けられた石綿が損傷、劣化等によりその粉じんを飛散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、除去、吹付け材に薬剤を吹き付けて固める封じ込め、非石綿建材で囲んで飛散を防止する囲い込み、のいずれかの措置を講じることとされています。このうち、除去については、事前調査、計画の作成、作業の届出、特別教育の実施が定められています。一方、封じ込め、囲い込みについては現在、そのような措置義務がかかっていない状況ですが、除去作業と同等の、又はそれに準じた措置を義務付けるものです。

 2点目は、天井裏やエレベーターの昇降路等における臨時の作業に係る措置です。通常労働者が立ち入る場所で、建築物に吹き付けられた石綿が損傷、劣化等によりその粉じんを飛散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、除去、封じ込め、囲い込みの措置を講じることとされています。しかしながら、天井裏やレベーターの昇降路等に労働者が入って点検等を行う場合においては、それらの措置を点検等の業者に行わせることは、現実的には困難であることから、このような作業を行う場合に、呼吸用保護具、保護衣又は作業衣の使用を義務付けるものです。

 3点目は、使用された工具等の付着物の除去です。石綿則においては、石綿を取り扱う作業場で使用した呼吸用保護具、作業衣、保護衣について、付着したものを除去した後でなければ、作業場外に持ち出してならないとされています。一方、石綿を取り扱う現場で使用した足場や器具、工具については、このような規制がかかっていない状況です。しかしながら、これらについても、そのまま外に持ち出すことにより、2次発じんのおそれがあるので、呼吸用保護具等と同様な措置を義務付けるものです。

 4点目は、記録の保存期間の延長です。作業及び健康診断結果の記録の保存については、現行ではその記録が作成したときから30年間とされていますが、アスベストによる疾患の潜伏期間が長期であることを踏まえ、EU指令による規制と同様に、石綿等を取り扱う作業場において当該労働者が常時当該作業に従事しないこととなった日から40年間とするものです。

 ただ今ご説明した政省令の改正内容ですが、26日の審議会で諮問し、即日答申をいただいており、政省令の要項などが厚生労働省のホームページで掲載されていますので、詳細は、そちらをご覧ください。以上で私の説明を終わります。

司会:ありがとうございました。和田氏は、講演後にお帰りになるので、ご質問ご意見をお受けいたします。

会場:A工業のBと申します。今度アスベスト規制が1%から0.1%という大変厳しい内容に変わってきているわけですが、まさに今これから夏休みの工事に対しまして、やはり現実的に立ち入りの権限のある労働基準監督署の監督官にお願いするより仕方がないと思います。その場合、十分な人数がいらっしゃるとは思えませんが、労働基準監督署の方々にできるだけたくさんの現場を厳しい目で見ていただいて、しっかりしたチェックとしっかりした指導をお願いしたい。我々にとってはそれしか方法が無いのではないか、と思っております。よろしくお願い申し上げます。

会場:CのDと申します。今後、吹き付け石綿除去工事がこの夏に向かって、公共施設についても多発するだろうということで、危惧しているところですが、厚生労働省の中でそのようなことについての議論といいますか、話し合われているようなことはあるのでしょうか。この夏については緊急事案だと思っているのですが、その辺のご認識はいかがでしょうか。

和田:この夏における対応に限ったことではないが、石綿対策については、厚生労働省においては最重点課題の一つとして取り組んでおり、各労働局に対してその旨指示しているところです。

会場:危惧している内容は、全国でアスベストの除去工事がかなりの数発注されていて、今それをきちんと工事ができる除去ができる業者がそれほどいないという現状の中で、不充分な知識しかもたない業者が多発している傾向がある中で、本来は出さなくていいアスベスト粉じんを発生させてしまうような工事が全国的に起こりうる。そうするとその犠牲になる子どもたちや地域の住民たちの問題が発生するということを危惧しています。その点に関しぜひご認識をいただいて、通達なり通知なり工事現場のチェックリストのようなものを全国共通で労働基準監督署に緊急で発していただくとかお願いしたいと思います。

和田:できるかできないかも含め検討したいと思います。

会場:その点についてまたあらためて、ご連絡差し上げたいと思います。

会場:昨年も学校での工事が多かったと思います。やはり文科省と厚労省が協議して今年の夏、子どもたちや教職員の安全を守るような、ばく露しない対策を取る必要があると思います。文科省との連携、一緒に対策をうつということはないのですか。

和田:現時点で、学校に関連し、文部科学省と連携して進めているものはありません。

司会:今日の会場の雰囲気等を考えて頂き、できる限り色々な事をやっていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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