Symposium 2008/08/28
日本産業衛生学会は、初回曝露16歳で曝露年数が50年、潜伏期10年で、1000分の1、1000人に一人が生涯に発症するリスクの相当値は、0.037f/mlとしています。今回は初回曝露が35歳、曝露年数34年ですから、当然初回曝露は高年齢ですし、曝露年数も少ないわけです。この方の石綿曝露濃度というのは0.001f/mlくらいの環境でございますから、オーダーが低いと考えられます。1000分の1と比べると、さらに数十分の1か、数百分の1くらいで、数万分の1から数十万分の1のリスクかと推定しました。本当は詳しく検討すべきですが、同じような環境に居た方もこのくらいのリスク値かと推計した訳です。
諸外国では、吹き付けのある建物からの中皮腫の発症が徐々に起きています。この方は日本で初めて、吹き付けの石綿のある建物で中皮腫になった訳です。曝露期間は1969年から2003年で今年2005年は、ちょうど石綿吹き付けが始まった建物の方の潜伏期がそろそろ始まる時期にあたっています。本来誰が吹きつけ石綿を管理するかというと、ビルの所有者に当然なるでしょう。しかし国も民間の建物の調査を定期的にしていかなくてはいけないのですが、国土交通省の現在の通達では1000平米以上が対象となっていますから、今回の小規模な建物については今も把握されていません。そういう中でこういう被害が始まっているということでございます。吹き付けの石綿については、少なくとも人の居る部屋について早急な除去が必要です。また今まで中皮腫となると、アスベストの仕事はございませんでしたかと聞いてきたわけですが、今後は建物についてもすべて問診をして調べていくということが必要な時代になってきたということであります。
結論ですが、職歴は無く、家族曝露、居住地の曝露は無くて、クロシドライトの吹き付けがある建物で、静かな段階でも大気に比べて濃度が高い状態で、1日数十分から1時間くらい滞在していた方が、中皮腫を発症された。肺内の石綿小体がだいたい曝露なしの2倍くらいで、繊維としてはクロシドライトが出てきたということです。
以上です。