シンポジウム第1回 公共建築物の吹き付けアスベスト

Symposium 2004 : 1-2

基調講演「公共建築物と吹き付けアスベストの問題点」(2/3)

 次の写真は施設の職員休憩室の部屋にあった「砂壁状吹きつけ(石綿含有)」です。旅館の壁などに砂壁に似ているので砂壁「状」とされ、表面がザラザラしています。掃除機の当たる所がこすれて砂状のものが床に落ちている様子です。アスベストが1%程度含まれていることがわかりました。

 次の写真は、吹き付けパーライト(石綿含有)です。10%程度アスベストが入っていました。小学校の天井でロックウールよりも白く見えます。見た目にはきれいで柔らかい質感のものです。

 次の写真は、ロビーや廊下や天井にあったもので、『ひる石の吹き付け』と言いアスベストが含有されています。天井のひる石の吹き付けを鉄の扉が開閉するたびにこすって剥げ落ちているものです。ひる石は幼稚園等によく使われていることが図面上で確認されています。

 以上の写真は多くの調査の後に判明したものもありましたが、初期の段階でも天井での吹きつけ石綿の劣化が確認されましたので、私たちはアスベストの現状を保護者に知らせるべきだと要請し、区は図面を作成して各学校に配布しました。学校の図面の斜線の部分にアスベストがむき出しでありましたが、普通教室以下ほとんどの教室の天井にアスベストがありました(下図)。子供たちは自分の教室だけではなく他の教室や図工室などへ行くことでも曝露した可能性があるのです。

 ほとんど全ての教室の天井、この色が黒い部分がそうですが、ここにアスベストが残っていました。これらについては、今年の夏休みまでに全て撤去されることになっていますが、当時はこのように広範囲にわたりアスベストが子供たちの目の前に天井にあったということになります。

 普通教室が1階・2階・3階・4階で4階が高学年の部屋ですがこの天井はそうとうひどく荒れていました。ある教室には下からブラシのような物で、漢字で『命』と書いてありました。天井に跡が付くことを喜んでしたのでしょうが、非常に危険な行為です。こういうことについても学校はきちんと把握して子供たちに指導すべきであったと思います。

 この時、練馬区が昨年の7月に第1次調査の結果を報告しています。最初の調査で区は一生懸命に広範囲にアスベストを探し出しました。これはその結果です。

 これが公共施設にあった吹き付けアスベスト等の目録です。11ありますが、区民センターや体育館やプールから出ています。保育園にもありました。保育園の倉庫や機械室ですがクロシドライトという非常に発ガン性の高い吹き付けアスベストが残っていました。含有率が21%でこれは非常に危険であるということで封鎖状態になっているはずです。

 ここからが学校のリストです。小中学校あわせて34校から吹き付けロックウール及びアスベストが発見されました。区の施設と合わせると40を超える施設からむき出しの状態でアスベストが発見されました。



 それについて練馬区では非常に早い対応をして2004年の夏休みには全て撤去するということになっています。その中でいくつか問題点が新たに出てきています。

 第1には先ほど写真でお示し致しました様に、2次調査等でアスベストを含有した吹き付け材が何種類か出てきました。第2の大きな問題として、国、厚生労働省や環境省のマニュアルでは『昭和55年以降の吹き付け材にはアスベストは入っていない』の不備が改めて又新たに判明した事です。今回の練馬区の吹き付け材の中からアスベストが発見されましたが、1980(昭和55)年以降の物も出てきています。それについて、私たちは製造業者に問い合わせをしましたが、『昭和63年の暮れまで実はアスベストの吹き付け材を作っていた』ということが判明しています。1980(昭和55)年以降の物には入っていないという国の判断は誤っている事が、改めて明白となりました。

 それでは何故このような事が起きたのかを、順に検証したいと思います。練馬区だけでない他の自治体に共通する国の問題であった事が、わかるのではないかと思います。その大きな理由は、昭和62年に当時の文部省が各自治体の施設主管課へ『アスベストの一斉調査を行いなさい』と指示にあります。この文書にいろいろ問題がありました。

 第1には、調査時期が限定されていました。『昭和51年度以前に建設された建物を調べなさい』、つまり昭和51年以降の建物についてアスベストの一斉調査の対象にならなかったのです。ところが国の判断・理解でも、少なくとも昭和55年まではアスベストが使われていて、実際には昭和63年まで使われていたのです。昭和52年以降〜昭和63年の建物が多くの自治体で調査対象とされませんでした。

 第2に調査対象の部屋ですが、校舎・屋内運動場・寄宿舎となっていますが、校舎については、『普通教室・特別教室を対象とし当該教室の数を計上する』となっています。実は一番使用されている給食室や廊下が抜けていたのです。ですから、今発見されている小中学校のなかで吹き付けアスベストが一番見つかるところは給食室などが多いのです。

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