地震とアスベスト シンポジウム2004基調報告2/3

The 3rd Symposium 2004 Earthquake and Asbestos

基調報告(2/3)

 震災当時の行政の対応をまとめてみました。

 1995年1月末の時点から、環境庁は対策をとり始めます。行政の中でも、環境庁と神戸市、兵庫県などが、省庁対策連絡会議というのを作って、環境庁、建設省などと集まって、建前が壊れたのをどうしようかと検討されていました。ほかにも行政はそれぞれ対策を検討していましたが、行政の検討内容はどこもほぼ同じでして、「吹き付けアスベストはできるだけ建物を壊す前に、事前除去をしてほしい。事前除去のできない場合は、散水をして、なるべくなるべく湿らせて、飛ばないようにする」というのが、事実上、当時可能と考えられていた対策でした。

 行政から、以上の対策を建設業者に通知するのですが、実際にそれが守られていたかどうかは怪しいです。又、法律的根拠がなかったので、従った業者と従わなかった業者があると思います。法的根拠ができたのは1996年の1月に兵庫県が作った条例が最初です。それから、5月になって環境庁が大気汚染防止法改正で、法律的に事前除去が義務づけられて、困難なら散水ということになりました。1995年に行政が先ほどの対策を発表したから1年経って、ほぼ同じ内容が法律になりましたが、その間は指導しかできませんでした。指導でしたから、それだけでは言うことを聞く業者はあまり多くいなかったと思います。

 この中で行政の対応が有力だったと思われる2つの方法がありました。ひとつは、神戸市が出しました工事中止命令です。神戸市は1995年5月に事前除去をちゃんとしなければ工事をするなということで、行政がしっかり権限をもって中止をさせた。これは、新聞に出たこともありますが、かなり有力な対応でした。もうひとつはお金のない民間の建築物のオーナーに、基本的にはオーナーが自前で解体するのですが、例えば西宮市は事前除去費の半分位を助成するとか、自治体によって対応は違いますが、補助をすることによって条件を守らせた。この工事中止命令と財政支援の2つが、この時有力な行政の対応だったと思います。

 吹き付けアスベスト使用の実態調査についてお話します。神戸市が、1995年3月に県や環境庁と一緒に一時調査をやりました。

 その後は、基本的に神戸市が主体となって、9月・11月と調査をした。表4の一次調査では1224件の建物を調べまして、実際見つかったのは25トンでした。それ以外は、分析までは至らなかったけれども1975年以前の吹き付けならばほぼ確実にあったのではないかと考えられる、1975年以前の鉄骨の建物ならば吹き付けの可能性が大きいだろうと推測されるもの、1975年以前で鉄骨でなければ可能性は中程度だろう、それ以外だったら可能性は低いだろうというものに分類し、500程度はアスベストがあったろうと調査結果を出しました。

 その後、2次、3次調査をしましたが、なかなかアスベストが私用された実態がわかる結果は出ませんでした。

 吹付けアスベストが使用されている建物を知る方法としては、一次調査のように分類することが、有効な方法だったかなと思います。これは、私の経験からの考えですが、構造別に考えれば、やはり鉄骨づくりは鉄骨に直接吹き付けられている可能性が高かった。

 鉄筋コンクリートの場合は、天井や壁に直接吹き付けられている可能性が高かった。木造の場合は、さすがにそういうことはないので、鉄骨造と、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造を注意する。年代別には、1975年以前のものを注意する。1980年までは△印という扱いにする。これは建築研究所の調査で、1995年の段階で、鉄骨建築物の中の半分位は1981年以前に建築されたもので、図のように半分位のものを注意するように考えていました。

 次は、床面積と吹き付け量の関係です。

 だいたい床面積が大きい場合は、吹き付け量も大きいです。■印は、天井に吹付けがある建物です。建物の大きさで、だいたい相関関係がありますけれど、天井にバアーッと吹き付けがある場合は、それ以外の建物よりアスベスト量は多いと考えています。

 また阪神淡路大震災に戻りますが、環境庁は2種類のモニタリングを行いました。

 発生源の近傍の調査と追跡継続調査というものです。追跡継続調査というものは、17地点を選びまして、1年近く測定を行いました。私は、これだけアスベストを継続的に調査したものはなかったのでこれを評価しています。特徴としましては、2月から測定を始めまして、10月まで毎月調査をやっておりまして、ここの図では2月-10月の結果が記されています。一番濃度が高かったのが西宮市のある地点で、2月・3月・4月頃に上がって、8月・9月・10月頃に下がりました。

 地震がなければ、一般環境としてはどれくらいかというと、1本/Lは超えません。(震災当時は)0.4-0.5本/Lであったかと思います。これは空気1リットルに対して何本のアスベストがあるかということです。最高が西宮市の6.0本/Lです。このようなサンプリング地点が具体的にどこであったかということについては、なかなか環境庁や現場の対応が忙しくて、モニタリング地点を教えて頂くことは当初できませんでした。後になって一般環境測定局で測っていたということがわかりました。尼ヶ崎のほうから伊丹、宝塚、西宮、芦屋、神戸が各区1個ずつ16地点。もう1地点は淡路島の計17地点でモニタリングをされています。

 吹き付けアスベストが一番の発生源と考えていましたが、それがどういう状態のときに飛散が多いかということを調べてみたいと思いまして、吹き付けアスベストを対象として除去現場、除去後の解体現場、非除去解体現場の3種類に分けて調査を行いました。

 環境庁と連携がとれなかったので、京都大学にいた私が研究室の人たちと一緒に、独自に調査を行いました。その時、西宮市が御協力して頂けることになりまして、これはかなり個人ベースの協力関係ができました。先程申しましたように、西宮市は解体に対して費用を支援するということで、建物のオーナーに了解を得て、16ヶ所の地点の調査をさせてもらったという経緯があります。A-Pまで色んな建物の中にアスベストがあるということが確認されました。

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