建設アスベスト訴訟ニュースNo.20
2025年10月1日

The Construction-Asbestos Lawsuit News

東京・大阪高裁で和解成立 ― 全国解決に向けた大きな一歩 ―

2025年8月7日、東京高裁で東京1陣・2陣訴訟が建材メーカーとの間で和解に至りました。

東京1陣訴訟では、原告372名(被災者285名)のうち332名(同253名)と7社が和解し、302名(同234名)に和解金が支払われ、責任が認められなかった5社も弔意とお見舞いを表明しました。

東京2陣訴訟では、原告131名(同112名)のうち114名(同98名)と5社が和解し、98名(同82名)に和解金が支払われ、責任が認められなかった建材メーカー12社も弔意を表明しましたが、積水化学工業だけは弔意を拒否し判決を選択しました。

翌8日、大阪2・3陣訴訟では、12社が67名に解決金を支払い、10社が謝罪、さらに責任が認められなかった9社を含む全21社が哀悼とお見舞いを表明して和解が成立しました。

和解のポイント

  • 責任を認めた建材メーカーが謝罪しただけでなく、責任を否定した企業の多くも被災者に弔意や見舞いを表明し、裁判所を含めて全体解決に向けて一歩前進した。
  • 国の給付金制度に加え、建材メーカーからの賠償金が支払われることで、結果として救済額が従来より大幅に改善した。
  • 東京と大阪の和解は同一の基準ではなく、統一的な和解要件にはなっていない。
  • 屋外工については東京では対象外、大阪では責任を否定したうえで和解が成立し、解体工については建材メーカーの責任を認めない状況で、屋外工・解体工の救済には至らなかった。

残された課題

東京・大阪両高裁での和解は、被災者救済を大きく前進させる出来事でしたが、一方で課題も浮き彫りになりました。

  • 屋外・解体従事者が救済から排除
    屋外工については国・メーカーの責任を認めない。解体工についてはメーカーの責任を認めない。実際の被害が取り残されている。
  • 責任認定期間の限定
    石綿吹付け作業については極めて狭い範囲(おおむね1972年〜1975年)に限定し、かつ屋内作業においても1975年以降に限定していることが問題。アスベストの危険性に関する医学的知見が確立した時期、建設現場でのアスベスト被害の実態とそぐわない。
  • 現場数の立証の過酷さ
    現場数の立証については、東京の和解案で「20件」という現場数の立証が具体的に示されたが、それ自体が和解の前提ではなく、同職種の証言等を参考に認められた例もある。しかし、被災者自身が数十年前の現場を思い出し正確に特定することは依然として大きな負担である。
  • 建材の使用時期による対象外化
    吹付け石綿のほか、ボードの代表建材(スレート、ケイカル板、Pタイルなど)であっても、メーカーごとの製造・販売時期の違いによって責任の有無が分かれ、被害者にとって不公平な結果を生んでいる。
  • 国の給付金制度の限界
    国の給付金制度は慰謝料全額を補償するものではなく、建設アスベスト被害の拡大に大きな責任を有する建材メーカーの責任を問わなければ、十分な救済に至らない点が問題である。
  • 訴訟依存による救済の遅さ
    東京1陣は提訴から17年、大阪でも長期化。生前救済が十分に行われない現状。

これらを放置すれば、多くの被害者が取り残される危険があります。任を認めない状況で、屋外工・解体工の救済には至らなかった。

今後の展望

東京および大阪の和解モデルは、全国の建設アスベスト訴訟解決に向けた指針となり得ます。

さらに、私たちは以下を求めていきます。

  • 責任期間の見直し
  • 屋外・改修解体従事者への救済拡大
  • 立証要件の緩和
  • 恒久的補償基金の創設(国+メーカー拠出)
  • 救済手続の迅速化

これらを実現して初めて、すべての被害者が公平な救済を受けられる道が拓かれます。メーカーの責任を認めない状況で、屋外工・解体工の救済には至らなかった。

結び ーこれからも共に歩み、闘っていきますー

今回の和解は確かに大きな前進ですが、まだ道半ばです。

アスベスト製造企業の法的責任を明らかにして、一日も早い原告・被害者への謝罪と補償、ひいては包括的な補償救済としての「政治的解決」を求め、首都圏では第5陣の提訴を検討しており、私たちの仲間も原告団に加わる予定です。

すべての建設アスベスト被害者が等しく救済される日まで、私たちは皆さんとともに声を上げ続けます。

東京地裁前集会

医療・健康相談員の
ご紹介

事務局長
尾形 海子(おがた ひろこ)

お困りのこと、ぜひご相談ください。「医療機関からCTやレントゲン写真を借りたいが、借り方がわからない」ときや「監督署へ相談に行きたいが、どう説明したら良いかわからない」ときなど、現場で皆さんのお手伝いができればと思っています。

尾形海子


委託職員
田口 正俊(たぐち まさとし)

お一人で悩まずに、ぜひご相談ください。以前、建設業の労働組合におりましたので、特に技能者や一人親方の方、ご自分の働いた履歴や元請の証明、労働者性があるかどうかなど、お困りの時にご支援できたらと思っております。

田口正俊


委託職員
斎藤 洋太郎(さいとう ようたろう)

母と妻が、労災患者です(脳卒中と脊髄損傷)。趣味は、日本を含む東亜の文化です。被害者・家族の人権を守りましょう。