石綿関連疾患の診断・ケア・飛散防止対策 石綿関連疾患総論(12/12)

Lecture by Dr Natori 2005

石綿関連疾患総論(12/12)

 下表をごらんください(66)。7月以降、アスベストが問題になりました。国土交通省は昭和31年から55年までの1000平米以上の民間建物の室内または室外に露出した吹き付けアスベストを調べるという通達を出しました。(この通達は後で、一部変更されます。)同じ国土交通省は、国の建物については、昭和63年以前、吹き付けアスベスト、吹き付けロックウールを調べなさいとしました。それから文部科学省は平成8年以前の全ての建物について、吹き付けアスベスト、吹き付けロックウール、吹き付けひる石、その他の石綿含有吹き付けを調べなさいと通達を出しています。厚生労働省は平成8年以前、壁、天井、柱などの吹き付けアスベスト、ロックウール、ひる石、その他としました。

 残念なことは、今も省庁の縦割りが続いているということです。建物の調査の共通した指示が出ていません。これで対策がうまくいくわけがない。省庁の縦割りが7月以降も続いているという典型の例です。

 石綿濃度の測定は今後一番大事な事ですが、環境省は今後大気を調べる予定です(67)。国土交通省も通常状態の建物内を調べる予定です。しかし文部科学省はそういう話は聞かない。厚生労働省も聞かない。厚生側も労働側も体系的にやるという話はまだ出てこない。

 一番大事なのは、どこにどのくらいの石綿濃度があって、だから安全か問題か、ということです。ところが残念なことに環境省は、「うちは大気しか測れない。労働環境はうちじゃないから、測れません。」という。国土交通省は、「通常の建物の中は測れますが、外は測れません。」

 実際はどこかで改築があって、確かに現場は厚生労働省の労働の管轄でしょう。でも、その近くの建物の中は国土交通省の管轄になる。外は環境省の管轄です。しかし本当は一体的に測らなくては困ります。でもその計画が無いのです。空気は省庁のものではないので、一体的にやってもらわねば困るという、典型的な問題が進んでいるので、この間、事あるごとに一体的に測ってくれと申し上げているので今後変わるかもしれませんが、今のところは問題があります。

 アスベストの新規立法の話が進んでいますが、被害者の救済はもちろんですが、今の話を見ていると、省庁に任せるのではなく内閣府に石綿対策の部署を作って、各省庁バラバラの対応でない法律作りをしていただかないと、いつまでたっても石綿問題は上手くいきません。石綿対策基本法的なものを作っていただいて、省庁の縦割りは廃していただく、情報は公開し、空気や廃棄物のモニタリングを行う。今石綿廃棄物がどこに行っているかすら、環境省は数値を持っていないです。石綿の環境基準を新たに作り強化していただく。被災者を救済していただく。そして飛散防止。こういう全体的なことをしなくてはいけない。この間ずっと石綿禁止を訴えて来たさまざまな団体が加盟する石綿対策全国連が石綿対策の全体的な基本法を作ろうという形で、2005年の10月23日から100万人単位の署名を行う話が出ています。是非協力していただき、今後は石綿対策を総合的に進めていく協力をぜひお願いしたいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。

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