石綿関連疾患の診断・ケア・飛散防止対策 石綿関連疾患総論(2/12)

Lecture by Dr Natori 2005

石綿関連疾患総論(2/12)

 ひる石の吹き付けの写真です(7)。皆さんのお近くのビルでも見られるよくあるものです。調査も情報もまだ十分でないので、建築関係者自体が見落とすことが非常に多い石綿含有の吹き付けです。

知られていない石綿(アスベスト)含有建材

 アスベストの問題の一つは、どこにアスベストが入っているか十分広く国民に知られていない事で、逆に言いますと危険物の情報を企業が十分に消費者に伝えてこなかったということです。これから、2004年10月に禁止された5つの石綿含有建材を見せます(写真は掲載していません)。これらの写真を見てすべて答えられるようになり、今後の改築や解体時の飛散防止にそなえないといけない訳です。次の写真には石綿含有建材が一つあります。ごく普通のビルで昨年までよく売られていたアスベスト含有建材です。街を歩くとすごく多い建材です。次も良くある街の風景です。いかがでしょう?これを知らないと、どこに対策が必要なのかということが分からなくなる訳ですが?なお、これらの建材は石綿則レベル3で飛散性が少ない建材です。

 上の工場の屋根が有名な波型スレートです(8)。工場とか鉄道駅の屋根などに良く使われていて、いたるところにあります。下の屋根は化粧石綿スレートで、クボタと松下2社が大手で過去に年間2万トン程度消費したと言われています。うちの屋根も同じ製品という方が多いのではないでしょうか?

 これが波型スレートです(9)。波型スレートへ、石綿則ではレベル3の建材としてされていますが、経年劣化する建材としても有名です。酸性雨その他の影響でセメント成分が徐々に溶出し、石綿(アスベスト)繊維部分のみ残存し飛散性が高くなることを経年劣化と言います。

 岩綿吸音板です(10)。これは1980年代まで天井材として良く使われていたアスベスト含有建材です。これも現在の製品には入っていませんが、以前のものは含有していました。石綿則レベル3の建材で、建物内にあるだけでは飛散しませんが、改築や解体時の石綿(アスベスト)濃度は1000 f/L台の濃度になります。

 これは古いビルでよく見かけるPタイルです(11)。アスベスト含有建材の典型的なもので、石綿則ではレベル3です。これもすぐ飛散するものではありません。加工の時に飛散します。

 アスベスト含有建材がなぜ問題なのかを説明いたします(12)。私も正直言って7〜8年前までは、改築や解体現場に行くことはなかったのです。ただあまりに建設業者に石綿関連疾患の方が多いので、呼吸器内科医として現場に行って見て予防するしかないと思いました。今の日本の改築・解体現場はこの写真の感じです。これでもきちんときれいにやっているほうです。これは天井や壁のボードをバールで突いて落とす工法で、バール破砕といいます。日本の改築・解体現場のほとんどで行われています。一応国は、手ばらしでやりなさいと言っていますが、現場的にそれはなかなかできない。ボードがネジで固く付いていたら、てばらし解体は時間がかかります。バールでやれば一日で終わるところが、手ばらしでやったら3日かかる。それでも改築や解体にきちんと工賃を保障する施主がどれだけいるかという問題です。石綿建材がこのように突かれて落ちてくるときに当然石綿繊維が飛散します。その濃度を測りましたが、吹き付け石綿より低いですが数千 f/Lの濃度で飛散します。今後、改築解体時の対策をきちんとしていかないと、石綿関連疾患は2010年以降の更に40〜50年後に出てしまう。この現実がこの7月に石綿障害予防規則が施行され、石綿含有建材も、不十分ながら対策を始めようとした一つのきっかけです。

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