Appendix
アスベスト被害の特徴は、多様なばく露形態という点にあります。具体的にいうと、
アスベストによるばく露は、採掘、石綿製造、石綿含有製品の生産、流通、消費、廃棄といった製品のライフサイクルの全ての過程で生じるため、その影響は長期間かかり広範囲に及び、「静かなる時限爆弾」とも呼ばれてきました。アスベスト被害は、単なる労働者の災害と工場周囲での公害との二つとして分類をしきれません。複合型の災害構造を有していることから、「複合型災害」と位置付けることができます。
この「複合性」は、職業、性別、地域、年齢などの社会的属性によって、被害の「多層性」や「広域性」などを特徴とする災害の属性として捉えることができます。また、情報公開の不足(情報バイアス)、被害者の声の軽視などの要因が重なることで、アスベストの使用と健康被害に対する制度的な対応の遅れなどで、アスベスト被害は「社会的に引き起こされた災害」あるいは「社会的構造による災害」としての側面が強いとされています。