5月2日〜3日、再び被災地に — 大船渡市災害対策本部に防じんマスクを提供

The Mask Project

 

 5月3日〜4日にかけて、マスク支援プロジェクトは再び被災地の三陸地方の入りました。今回のメンバーは永倉冬史(アスベストセンター)、飯田勝泰(東京労働安全衛生センター)、仲尾豊樹(東京労働安全衛生センター)に加え、菅原喜東司(アスベストセンター)、石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長、そして民主党のアスベスト対策プロジェクトチーム事務局長の工藤仁美衆議院議員(北海道比例区)も車に同乗し、陸前高田、大船渡、釜石、大槌を巡りました。

 

 5月2日午前、陸前高田に入りました。津波の被害は甚大です。ほとんどの建物は破壊され、ガレキを運ぶダンプカーが粉じんを巻き上げて何台も走っていました。街の残骸のなかをマスクをした三人の少女が歩いていたので声をかけてみると、地元の中学二年生の同級生でした。二人は避難所で生活していました。「家族は大丈夫でしたか?」と尋ねると、ひとりの少女が「お母さんがまだみつかりません」とこたえました。無神経な質問を詫び、ガレキから出るほこりやアスベストに気をつけてほしいとお話しました。

 街中はほこりっぽいためマスクは必需品のようです。持参した防じんマスク(DS-2)を手渡すとさっそく着けくれ、手を振って私たちの車を見送ってくれました。

 東京に戻り、彼女たちにお礼の手紙と一緒に撮影した写真、心ばかりのプレゼントを送りました。

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陸前高田で石綿スレートを調査(仲尾、永倉、工藤議員)

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陸前高田の中学生達と(飯田)

 

 午後、大船渡市役所で大船渡ボランティアネットワークサポートセンターの石鍋博子さんにお会いしました。彼女は東京在住の現代アートコレクターです。いまは地元でボランティアのコーディネーターをされています。市役所の庁舎は高台にあるため直接の被害は受けなかったようです。災害対策本部を訪ねると、副本部長、紀室輝雄副市長と幹部の方々に迎えていただき、大船渡の被災状況の説明を受けました。私たちはマスク支援プロジェクト活動の趣旨をお話し、社協の支援ボランティア用に防じんマスク(N-95)を1,000個を提供しました。 その後、石鍋さんの案内で海沿いの街中を回りました。市街は津波にやられ、商店街の店舗や水産加工の工場も破壊されています。茶屋商店街の中心あたりで持参したお花を献花し、被害に遭われた方々に黙とうを捧げました。

 商店街のパチンコ店や店舗の鉄骨部分がむきだしとなっており吹付けが露出しています。数か所の吹付けをサンプリングし、分析することにしました。車で走っていると道路沿いにレトロ風な建物の二階部分が放り投げられたように横たわっていました。何と!それが石鍋さんの流された実家の医院とのこと。お父様が無事だったのは幸いでしたが、津波の破壊力の凄まじさを実感しました。

 5月29日大船渡市の猪川小学校の校庭で「やっぺし祭」が開催されます。「やっぺし」とは「よしやろー」という意味。石鍋さんたちが中心になって準備を進めています。地域の人々とアーチストが一緒になって元気になるようなお祭りで、炊き出しや地元の祭り、連凧や太鼓の演奏、ライブ、餅つきなど催しものが盛りだくさんです。私たちもブースを借りて、パネル展示やマスクの付け方教室を開くことにしました。アスベストから身を守るためにはどうすべききか、被災地の人々や子どもたちと対話を広げていきたいと思います。

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大船渡災害対策本部に防じんマスクを提供(工藤議員、永倉、飯田、紀室副本部長

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大船渡のサポートネットワーク・センターの仲間と(福祉の里)

 5月3日午前、釜石市内では自衛隊が倒壊した木造の家屋の撤去作業を行っていました。住民の方が遺品や大事な品を探しておられました。パワーショベルを使った撤去作業は周囲にもかなりほこりを飛散させています。近くで見守っていたお年寄りや子連れの女性に防じんマスクを配り、その場で着けていただきました。

 自衛隊は防じんマスクは配布されているようですが、隊員によってはマスクを着けていなかったり、一般向けのマスクだったり。簡易式の防じんマスクの種類も隊員によってまちまちでした。また市の委託を受けてガレキ調査の巡回をしているグループに遭遇しました。彼らもマスクを着けていません。粉じん・アスベスト対策と防じんマスクの使い方を説明し、その場で着けてもらいました。

 市内のある地域では鉄骨造の建物に吹付けがむきだしになっている状態が目立ちました。アスベスト含有であればむやみに建物を解体できません。被災地とはいえ、アスベスト粉じんの飛散防止と作業者のばく露防止対策を十分行わなければなりません。そのために国による資金、技術の全面的援助が不可欠と思われます。

 

 釜石市の庁舎は使用不能状態のため、災害対策本部を訪ねました。野田武則市長と面談し、ガレキの撤去の作業員はもちろんのこと、周辺の地域の住民や子どもたちへの健康影響が心配されるため、(1)むやみに近づかない、(2)散水する、(3)防じんマスクの配布を提案しました。マスク支援プロジェクトとしてもできる範囲の協力をしたいと伝えました。

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釜石市内の撤去現場で防じんマスクを配布する

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倒壊した家屋から必要な品を探し出す住民と自衛隊

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倒壊家屋の撤去現場の周辺でお年寄りに防じんマスクを着けてもらう

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釜石災害対策本部で野田市長に面会、市街地のアスベスト対策を要請(野田市長、工藤議員、永倉)

 釜石市から大槌町を回った後、午後3時に東北自動車道の北上インターから東京を目指しました。ゴールデンウィークの影響もあり、仙台に向かう前から大渋滞が続き、亀戸の事務所に到着したのは5月5日深夜0時半を回っていました。

 

 工藤仁美議員には、東京に戻ってさっそく解体業や警備業の団体に対する被災地でのアスベスト対策に関する緊急提言の要請に立ち会っていただきました。これからも民主党PT事務局長として、被災地の粉じん・アスベスト対策への取り組みを期待したいと思います。

 

<調査報告>

「東日本大震災第4次アスベスト調査報告」永倉冬史(20110年5月8日、PDF)

 

<資料>

  1. 社団法人全国解体工事業団体連合会宛て「東日本大震災における、がれき撤去作業者のアスベスト粉じん対策に関する緊急提言」(2011年5月10日、PDF)
  2. 社団法人全国警備業界宛て「東日本大震災における、被災地警備員のアスベスト粉じん対策に関する緊急提言」(2011年5月10日、PDF)