東日本大震災被災地 アスベスト調査報告

Asbestos Survey Report of Great East Japan Earthquake

  • 中皮腫・じん肺・アスベストセンター(以下アスベストセンターと省略)と特定非営利活動法人東京労働安全衛生センター(以下、東京センター)は、 2011年3月11日に発生した、「東北地方太平洋沖地震」(以下、東日本大震災)直後から、被災地のアスベスト調査を行いました。これが最初の調査となります。
  • 地震発生から2週間後の3月25日、26日と、東京から被災地に向かいました。
  • 仙台市内では、仙台駅が大きな被害を受け、駅前の商業ビルの壁にひびが入り、市役所の壁や自転車置き場の天井板の落下、駐車場の吹付け材の落下などが見られました。
  • 仙台市郊外を走る仙台東部道路(自動車道)の東側は、津波が押し寄せ、自動車道の土手になぎ倒された木や自動車が積み重なり堆積していました。自動車のフロントガラスには人の有無を知らせる大きな✖印がつけられていました。
  • 海岸方向に向かうと、人家や学校なども流され、電柱もなぎ倒されていました。
  • 車から降りると、広大な田んぼがあったと思われるところは、きめの細かい泥で覆われ、ヘドロのようなにおいが周辺をおおっていました。風の音しかしません。このころから数年にわたって時間が止まってしまいました。
  • ガソリンの制限があり、東京への帰りの車のなかは、想像を超えた非現実感に言葉を失い寡黙なままに東京の日常に帰っていきました。被災地での多くの課題が頭をよぎりました。
  • 4月10日、第2回目の調査に被災地に向かいました。
  • まずは南三陸町のベイサイドアリーナへ行きました。ここは避難所になっており、各地からの救援物資の受け入れ所にもなっていました。
  • ベイサイドアリーナから市街地へ下って行くと、川沿いに海から押し寄せたがれきが山積みに堆積していました。
  • 急づくりの主要幹線道路の周囲は、背丈を超えるがれきが、道路を開通させるために積み上げられ、粉々になったアスベスト含有と思われる建材の破片が大量に見られました。
  • 津波被害により、海に面した市街地全域ががれきの山と化していました。がれきの中にはアスベスト建材が破砕したかけらが大量に見られました。
  • 鉄骨造の建物も壁などは破壊され、鉄骨の吹付け材がむき出しになった建物も見られました。
  • 倒壊した建物の鉄骨が寄せ集められていたところがありましたが、鉄骨には耐火被覆の吹付け材が残ったままのものもありました。

2011年4月10日 南三陸町津波被災地

南三陸町津波被災地

南三陸町アスベスト含有がれきの破片

南三陸町アスベスト含有がれきの破片

鉄骨に残った吹付け材

鉄骨に残った吹付け材

病院の2階部分に船が乗り上げている

病院の2階部分に船が乗り上げている

南三陸町、津波で倒壊した建物の鉄骨が集められている。
鉄骨には吹付け材が・・・

南三陸町、津波で倒壊した建物の鉄骨が集められている。鉄骨には吹付け材が・・・

銀行の跡。鉄骨には吹付け材が吹付けられている。

銀行の跡。鉄骨には吹付け材が吹付けられている。

アスベスト含有と思われる破砕されたがれき

アスベスト含有と思われる破砕されたがれき

南三陸町防災対策庁舎

南三陸町防災対策庁舎

道路わきに寄せられたがれき。
アスベスト建材が多く見られる。

道路わきに寄せられたがれき。アスベスト建材が多く見られる。

波形スレート板のかけらが散乱している

波形スレート板のかけらが散乱している image

室内壁材の奥に、吹付け材

室内壁材の奥に、吹付け材

アスベスト含有が疑われる建材はすぐに見つかる

アスベスト含有が疑われる建材はすぐに見つかる

5月2-5日調査

5月頃には、被災地では津波による湿潤状態が乾燥しはじめ、がれき撤去も本格的に始まり、各地で粉じんの発生が見られました。

5月2日から5日にかけて、陸前高田市、大船渡市、釜石市に調査に入りました。陸前高田市では、海に面した市街地は津波でほとんどの建物は倒壊し、いくつかの頑丈な建物はゴロンと建物ごと転がっている有様でした。

重機によるがれき撤去がそろそろ始まっていましたが、重機のはさみががれきをつかむたびに粉じんがもうもうと立ち上がり、重機が反転するたびに粉じんの幕がゆっくりと町中をなめていきました。その中で交通整理の作業者は、笛をくわえてマスクもしていない状態でした。

津波で別れ別れになった母親を捜して、女子中学生が友人と3人で、がれきを撤去している町中を歩いていました。一般粉じん用のマスクをしていましたので、アスベストに対応するマスクを手渡しました。

釜石市では住宅の解体撤去が始まり、市民は自分の家が解体されるのを見守っていました。市民も花粉用などのマスクをしていましたので、アスベストに対応するマスクを手渡し、つけ方の指導講座を緊急で行いました。

大船渡市では、地元の消防士などボランティア活動をしている人たちと、アスベストの情報交換をし、防じんマスクの普及を呼びかけました。

5月3日陸前高田

5月3日陸前高田

釜石市市長とアスベスト粉じん対策について懇談

釜石市市長とアスベスト粉じん対策について懇談

釜石市がれき撤去

釜石市がれき撤去