The Literature Award
アスベストとその関連疾患は、患者や家族が社会生活を営む中で、こころの深いところに痛みを残すものです。文芸作品(小説や児童文学、シナリオ、ノンフィクション)は、ひとのこころの深層に働き、読者を癒すこともあれば、深く共感し生きる力となることもあります。私たちは、過去に公表されたアスベストに関する文芸作品を表彰することで、患者や家族にお知らせして今後の歩みの一助としていただくとともに、多くの方に社会や歴史とも係わりのあるアスベストへの関心を持ち続けていただきたいと考えています。
文芸賞への応募は全部で6点あった。アスベストセンター賞ならびに審査員特別賞に選出した2点が、作品の出来栄えとして抜きん出ていたという点が、選考委員の一致した感想であった。
受賞者:方 政雄(ぱん じょんうん)
掲載誌/発表した書籍名:白い木槿(むくげ)(新幹社)
公刊/発表年月:2021年11月
年齢:73歳
居住都道府県:兵庫県
選評:
クボタショックの前史とその後に関係者にふりかかる悲劇が、どちらも具体性を持った物語として描かれ、迫力がある。一人の少年が成長していく視点を通して、その時代時代の尼崎の土地の様子が見事に描写されていた。
比喩表現も秀逸である。自然の風物や背景がしっかりと書き込まれていて、文章表現の巧さが小説としての味わいを生んでいる。
五感を活かした表現の中に、主人公が病に倒れながらも、前向きに生きようとする姿勢が読後感の良さに繋がった。アスベストのテーマだけではない、豊かな文学性を持った優秀な作品である。
受賞者コメント:
この度の受賞、有難うございます。アスベスト疾患の兄は人工呼吸器を装着し点滴チューブを何本か体に刺したまま、苦しみ逝った。悲しみ、そして怒りが湧きあがり、この惨事を弟として知らしめなければならない義務を感じた。作品を書き始め身近で生々しい様子を知っているだけに、辛く筆が進めなくなった。友人もアスベストによって亡くなっていたことを知った。再び筆を握り「弟」でなく隣の幼馴染を視点にすることで書き進めることができた。今回の受賞、兄と友人は喜んでくれると思う。
方政雄
受賞者:中村 千恵子(なかむら ちえこ)
掲載誌/発表した書籍名:泉南アスベストの会
公刊/発表年月:2021年4月
年齢:76歳
居住都道府県:大阪府
選評:
国の責任を問うた泉南石綿訴訟が、絵とともにわかりやすく描かれていた。
文芸というのは総合芸術であって、本作品は総合的な文芸作品として完成度が高い。
原告や弁護士の証言や発言が、表情も含めた似顔絵とともに綿密に記されており、文学が持っている記録性というものを思わせるような、価値のある優れた作品である。
受賞者コメント:
地元で開かれた学習会がきっかけで泉南アスベスト裁判の傍聴を始めました。裁判で原告が赤裸々に生活や被害のありさまを訴える姿に魅せられ描き続けました。庶民が勝ち取ったこの闘いを絵巻物にしてそれを本にでき、本当にうれしいです。賞を頂いたこの本は原告、弁護団、支援者のありのままの姿です。原告が実名で顔も出し思ったことを語る姿はかっこよかったです。一人でも多くの人に読んでほしいです。
絵手紙ライター 中村千恵子
2024年7月16日現在
第一回の募集は締め切りました。
応募期間 : 2023年10月1日(日)~2024年1月5日(金)(必着)
入賞者発表: 2024年7月中(諸事情により発表を3月中旬から7月に延期しました)
受賞作品 : 2024年内にアスベストセンター機関誌にて発表
アスベストセンター賞 : 賞状、副賞40万円
審査員特別賞(数点まで): 賞状、副賞10万円
佐伯一麦氏(作家)、大島秀利氏(毎日新聞専門編集委員)
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-10-1 Zビル5F
中皮腫・じん肺・アスベストセンター
「アスベスト・文芸賞」係
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-10-1 Zビル5F
中皮腫・じん肺・アスベストセンター
「アスベスト・文芸賞」係
asbestosawards@gmail.com