About Asbestos Waste
アスベスト問題において「最後の課題」とされるのが廃棄物問題です。
日本には過去に1000万トンものアスベストが輸入され、もっとも多く使われたといわれる建材をはじめ、はてはドライヤーやコタツといった家電まで3000種類以上の製品に利用されてきたといわれています。ところが、いったいどの製品にアスベストが使用されているかすら現状では十分明らかになっておらず、いまだに新たにアスベストが使用された製品が見つかるほどです。
現状ではアスベスト含有か否かを比較的調べやすい建材でさえ、きちんとアスベストの調査がされないまま廃棄されることが少なくありません。ましてや一般家庭の家電製品にいたってはほぼノーチェックで廃棄されており、自治体には問い合わせもほとんどありません。アスベストが使用された製品が多く、しかもどの製品にアスベストが使われていたのかさえ十分に明らかになっていないうえ、比較的アスベストがあることがわかりやすい建材でさえきちんと廃棄されない状況下で、どのように廃棄物を安全に処分するかというのはきわめて難しい問題です。
そもそも酸にもアルカリにも強く、熱にも強いという特性を持つアスベストをどのように安全に処分するかということには日本に限らず多くの国が頭を悩ませています。
日本ではアスベスト製品の製造は禁止され、基本的に製造工場からのアスベスト飛散はなくなり、アスベストの発生源は(1)現在使用している建築物などや、(2)建物などの改築・解体現場、(3)廃棄物処理施設へと移っています。すでに廃棄物処理に関わった労働者のアスベスト被害の発生が確認されており、今後、こうした被害の増加や周辺住民の被害も懸念されます。
ここでは廃棄物処理をめぐる問題について、具体的な資料などを提供するとともに、過去に問題になった事例がどのような経過をたどったのか、比較的うまく対応したというグッド・プラクティスも含めて紹介します。
“飛散性”アスベスト廃棄物(廃石綿等)に将来なるとみられるストック量が数十万トン、“非飛散性”アスベスト廃棄物は同4000万トンと推定されています。そのうち、廃石綿等は年間3万トン程度が処理されています。“非飛散性”アスベスト廃棄物は年間100万トン以上が処理されているとみられますが、統計が存在しないため実態はわかりません。
廃石綿等を受け入れる最終処分場は全国に50カ所程度。アスベストを高温で溶かす「溶融」処理ができる施設は10数社程度です。“非飛散性”アスベスト廃棄物は、がれき類を処分する許可を持った最終処分場であればどこでも処分することができることになっています。
統計中で「廃棄物」などと書かれたものをたどると廃棄物関連の作業をして中皮腫などのアスベスト疾患を発生させて労災認定が出た企業がわかります。
アスベストが土壌に含まれていたとして問題になるケースがいくつか出始めています。現状では日本では土壌汚染対策法ではアスベストは対象外となっており、規制されていません(米国などでは規制ずみ)。ところが、土地の取り引きなどでアスベストやアスベスト建材、アスベスト廃棄物が土壌に含まれていた場合、土地の瑕疵などとしてすでに訴訟がいくつも起こっています。