2006年度 活動報告

1.全体の活動について

 2006年2月厚生労働省が、中皮腫の労災認定基準を改正した事により、中皮腫の多くの方が労災補償を受けられる様になりましたが、石綿ばく露量等が少ない中皮腫事例での業務外認定が問題となっています。中皮腫の2倍以上あるとされる石綿肺がんの認定基準は諸外国と異なり厳しいままで、認定されにくい状態が続いています。環境や家族ばく露の中皮腫及び時効の中皮腫と肺がんの方に「石綿による健康障害被災者の救済に関する法律」ができ、何の補償もなかった時代は少なくともなくなりました。

 しかし被災者遺族による申請主義・低い給付水準・生前申請主義・時効の存在・石綿肺等が対象疾患でない事・同一生計など法律の問題は、数多く残ったままです。何よりも国と原因企業の責任で負担する法制度ではなく、労災保険加入企業が広く薄く負担するという考えに基づいた不適切な制度である事が問題です。本来「救済でなく補償」の法律に抜本的に改正すべきと思われます。アスベスト対策の基本となる労災認定事業所の公表はされていません。

 石綿の総合的対策では、国土交通省が建築主事等向け講習を2006年10月に始めたものの、省は民間の1000平方メートル以下の吹きつけアスベストの調査も公共建築でのひる石吹きつけ建物調査もダクト内アスベスト調査も実施していない状況です。公共建築物での吹きつけアスベストの除去期限も決めずに、多くの対策は今後となっています。吹きつけ以外のアスベスト建材について問題は山積しており、飛散防止対策は石綿則の実質化と共にまさにこれからです。

 廃棄物についても対策は始まったばかりで、廃棄物処分場周囲のアスベスト濃度は、大気1リットル当たりアスベスト繊維10本、と設定されました。この間関連諸氏の努力はあったものの、国のアスベスト関連担当者会議は徐々にレベルも頻度も下がったままで、国レベルで十分かつ総合的な法律制度やアスベスト対策は行われていません。

 化学物質管理諸法の改正においても国は省庁連携会議の開催のみでNPOが参加した制度設計を考えてはおらず、EU等がアスベストを参考にして予防原則を考えた化学物質管理を行おうとしている事と比べ、日本はかなり遅れた手法をとり続けています。

 アジアでのアスベスト規制の広がりの契機となるべく開催された昨年7月のバンコクの国際会議には、アスベストセンター含め日本から多くの関係者が参加しました。昨年3月の石綿対策全国連主催のシンポジウム、国会要請行動には、全国の被災者含め多くの団体と個人が参加し交流を行いました。

 横須賀の造船アスベスト裁判が地裁判決で確定、保温工の最高裁判決も確定する等、アスベスト製造業や造船等のアスベスト関連企業の労災認定者での判決や上積み補償制度が認められ、アスベストユニオンが上積み補償を求めた交渉が始まった年でした。一方、北海道ホテルボイラーマンの中皮腫裁判の不当な全面敗訴、泉南地区での国家賠償裁判の開始等、法的な変更にもつながる長い闘いも始まった年でした。環境被害の顕在化も、大阪・奈良・岐阜・神奈川で明らかになりました。

2.省庁交渉の取り組み

 クボタショックから時間が経つにつれ行政の姿勢が後退している現在、基本法的なアスベスト対策を確立するため、省庁の連携を求める交渉・国会対策が必要です。具体的には、労災認定事業所の公表・被災者保護の立場で認定基準などを運用することが急務です。

3.全国からの電話相談対応

 当センターの基礎的な活動として電話相談を毎日継続してきました。全国へ相談員を派遣し個別相談と地域の支援体制作りを援助してきました。相談事例と対応を見直す検討の場や研修を毎月実施してきました。

4.労災認定支援と新法認定の支援について

 電話相談やホットラインなどの相談に対応し、各地域の安全センターと連携して、補償救済の取り組みを進めました。中皮腫だがアスベストばく露が不明として業務外にされた・アスベストばく露は明確だが肺がんの医学的所見が乏しい・医学的資料が整わず救済給付の認定に時間を要する・石綿肺の患者だが労災も救済給付も出ない等の困難な事案もあり、省庁交渉で取り上げました。

5.中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 事務局活動

 昨年度は、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の事務局の強化に協力しました。全国事務局は毎月開催され、機関紙の発送やホームページの更新が順調に行われました。会の関東支部の活動にも協力してきました。大所帯になりつつある会の運営の模索が始まりました。(本年5月上旬で正・賛助会員合計530人)

6.環境アスベスト相談の活動

 全国からの環境相談に応じ、学校でのアスベスト対策の充実や、自治体での対策の促進、石綿規則の実施と監視、環境教育の実施等に取り組んできました。具体的には、佐渡島の小学校児童のアスベストばく露調査・能登半島地震被災地のアスベスト調査・愛知県と小田原のボウリング場など廃墟のアスベスト調査と地元住民への啓蒙・浜松のアスベスト最終処分場の濃度測定や住民への講演を行いました。

7.法律プロジェクト

 2005年7月に発足した法律プロジェクトは、関西・関東の両地域を主な受け皿として2年目に入りました。近鉄高架下の文具店での吹き付けアスベスト飛散による環境ばく露は係争中。旧国鉄大船工場での車両解体・修理作業でのアスベストばく露は1月29日提訴。さらに鶴見・川崎での車両連結・切り離し作業でのアスベストばく露は3月27日提訴。札幌のホテルボイラー室内でのアスベストばく露は3月2日原告敗訴の判決で控訴準備中。昨年5月に提訴された大阪泉南の石綿工場周辺の環境ばく露の国家賠償訴訟は始まったばかりです。国家賠償に関しては、訴訟の有利な進行の為に弁護士レベルで協力しました。

8.調査・研究活動

 2005年度の建物内石綿濃度の検討には、国土交通省建築分科会アスベスト部会に名取が委員として参加、平成17年度科学技術振興調整費による文部科学省「アスベストによる健康障害対策に関する緊急調査研究(建築物室内のアスベストの濃度指標の検討)」<日本建築センターが受託>に、名取・外山・永倉が委員として参加しました。その報告書・別冊が2006年夏に作成され、建物内リスクが低い事に関して貴重な提言が行われました(当センターホームページに掲載中)。

 厚生労働省「石綿に関する健康管理等専門家会議マニュアル作成部会」委員に、昨年2月から飯田・名取が委員として参加、同年11月に「石綿ばく露歴把握のための手引き」として完成しました。石綿の職業性ばく露やその他のばく露、文献及び労災認定事例等を把握する方法として現状で最も詳しい内容と思われます。

 2007年2〜4月国土交通省が財団法人日本建築防災協会に委託した「地震時における被災建築物応急危険度判定におけるアスベスト飛散防止対策検討調査委員会」委員に名取(永倉)が参加しました。厚生労働科学研究費の研究委託で、調査票の記載に協力しました。

 6月28日には講演会・シンポジウム「適切な吹き付け石綿除去工事を・2006年夏」を開催し、ホームページに緊急で掲載しました。開催直後に佐渡両津小事件が起き、文部科学省や厚生労働省が相次いで通達を出す事になりました。

 2007年1月には、東京労働安全センター及び建通新聞社と共同編著で、「実践!!建設業のためのアスベスト対策−被害者にも加害者にもならないために−」を、建通新聞社より発行致しました。東京労働安全衛生センターの空気中アスベスト濃度測定、アスベスト建材の有無と含有率分析等に全面的に協力しました。中皮腫・アスベスト疾患・交流会は、昨年に3回の講演会と事例検討会を行いましたが、その活動を後援しました。ビルの石綿建材、天井内吹きつけ石綿濃度測定、駐車場の吹きつけ石綿問題は十分な調査ができませんでした。石綿障害予防規則に関する現場実態の改善状況把握調査、医療論文翻訳は実施できませんでした。

9.ホームページ等による情報提供

 ホームページの月間のアクセスは2006年4月が16,000件でしたが、12月に10,000件、2007年4月は8000件となり、基礎的な情報が広く行き渡りつつある事と、関心の低下のどちらも伺わせる結果となっています。6月28日の講演会・シンポジウム「適切な吹き付け石綿除去工事を・2006年夏」はホームページに緊急公開され、多くの方に情報を伝えました。眼で見る石綿製品コーナーの充実に代え「石綿ばく露歴把握のための手引き」をダウンロードできる様に工夫しました。相談者の声、法律や通達ページ等の充実、海外状況の解説等は十分な内容には至りませんでした。1月と5月に機関紙を発行しました。

10.建材相談の活動

 屋根材のコロニアルへの相談が多く、特に高圧洗浄による工事が目立ちました。新潟県佐渡では砂を吹き付けてアスベストを取り除く工事が行われ生徒がばく露しました。最近では賃貸関係で借りる際、建物にアスベストが有ってもそれにより被害を受けても責任を負わない契約書にサインさせられるケースが出てきました。

11.地震での対応

 地震と防災体制に関するシンポジウムは、昨年度は開催できませんでした。2007年4月の能登地震の被災地には、永倉が訪問し現地視察を行いました。

12.中皮腫の方の写真撮影について

 尼崎を始め、全国の中皮腫等の被災者ご家族の写真撮影を実施しました。

13.事務局体制

 2006年7月に斉藤洋太郎を常勤事務局職員に迎え、ボランティアが支える団体から常勤職員が中心となる団体へ比重を移行し始めた年となりました。職員もボランティアも、休みが取れ始めた年となりました。必要に応じて、非常勤職員等の補充を行いました。

14.他団体との協力

 石綿対策全国連絡会議、全国労働安全衛生センター連絡会議、(NPO法人)東京労働安全衛生センター、(社)神奈川労災職業病センター、(NPO法人)じん肺アスベスト被災者救済基金、名古屋労災職業病研究会、関西労働者安全センター、尼崎労働者安全衛生センター、(NPO法人)ひょうご労働安全衛生センター、(NPO法人)愛媛労働安全衛生センター、広島労働安全衛生センター、(財団法人)新潟県安全衛生センター、鹿児島労働衛生センター準備会(姶良ユニオン)、(医)ひらの亀戸ひまわり診療所、じん肺患者同盟(北茨城・高萩・東京東部・横須賀・建設東京支部)、建設じん肺被災者の会東京、横須賀地区じん肺被災者の会、全建総連東京都連、労働者住民医療機関連絡会議、アスベスト訴訟弁護団・関東及び関西、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、新化学物質政策NGOフォーラム等の諸団体と協力して活動してきました。

15.会員数(5月11日現在)

 個人正239人・個人賛助73人・団体正20・団体賛助9です。