シンポジウム第3回 地震とアスベスト

シンポジウム第3部 教訓を生かすためにはどうすれば良いのか

司会: これまで阪神淡路大震災の話を中心に議論してきましたが、次は教訓を生かすにはどうすればいいのか、議論したいと思います。

大越: アスベストが社会問題化して16-17年経ち、その間の法規制も徐々に制定補足されて来ましたが、その中で法律の一定のルールで規制を高めようと思っても非常に難しいのではないかという風に思うわけです。先程から再三申し上げております通り、私の持論としましては、建物にアスベストが使われていなければ少なからずとも、こういう災害にあった建物アスベスト粉塵の飛散というものは防げるわけです。ということからすると、できるだけ早期に平時において、アスベストを建物から撤去してしまえばいいと、これを必ずしも民間ペースだけでやろうと思っても、なかなか難しい問題があります。そうなると、やはり国の規制や指導、それから補助金、融資とか、そういうものも含めて国のほうでもできるだけこのへんの観点を高めて頂く、ということが一番大きな問題解決のベースになるのではないかと思っております。

中地: 封じ込めや囲い込みという方法もアスベスト対策除去工事として認められています。しかし、そこが壊れて飛散したというのは3件か4件あります。そういう意味では除去工事の方法の中に、解体する時には撤去するという形にして、とりあえず封じ込めや囲い込みで良いというのは、やめて頂きたい、というのが一点。二点目は、木造の家は瓦が多かったので倒れたという話がありました。そこで全て洋瓦に変えました。洋瓦にはアスベストが含まれているので、これもまた、もし何年かして解体する、或いは、もし地震があった時には飛散する恐れがあるので、そういったアスベスト含有建材の規制というのをもう少し高くして頂きたかったという風に思います。

名取: 地震以前に行う問題と、地震の時の問題と、2つあると私は思っています。地震以前の問題とは、いろいろなアスベスト建材のリスクに注意しているということです。改築や解体で今後建築の方も石綿を吸うし、周囲の住民の方も石綿を吸うわけです。日頃の段階で様々な形で、「あそこにアスベスト建材がある。あれは自然に飛散しやすい、あれはいじれば飛散しやすい。」ということを知って頂く事だと思います。事前にどうやって情報を掴んでいくのか?そのためには、石綿が健康上のかなり大きな問題だ、という認識を広くもたないとまずいのだと思います。

 一例として、環境省が以前不動産関係の資料を使ってアスベストマップ、この地域の何処の建物に吹き付けがあるのか、という事前調査を行った研究があります。結局法的には制度化できないで止まってしまっていますが、吹付けアスベストの実態を事前に掴むことは可能なのです。法的に実態を把握するようにしていく事が非常に大きな事だと思います。実態調査を吹き付けアスベストに留めないで、アスベスト含有建材にも広めていけば、なおの事事前の把握は一定可能です。

 あとの問題は石綿の飛散防止や除去の対策を、建物所有者(施主)の責任に、法的にするのかどうかの問題があります。法的にそうすべきだと思いますが、現実的には簡単にはいかないでしょう。どこがどの程度責任をとっていくかということについては、簡単に区別できないと思いますが、事前に取り組むことがとにかく必要だろうと思います。

 地震の時の問題については、今後定期的に様々な問題を考えていくことです。もしくは小規模の震災がどこかであった時に一定の調査をして、少なくとも濃度がこうだった、この対策を試みた結果これだけの濃度だった、こういう蓄積をひとつひとつ積みねる機会を是非作って頂きたい。それにより、実は散水するよりも飛散抑制剤をまいておけばよかったのだ、というデータもでるでしょう。実際にNPOが監視したらうまくいった、とういうこともあるでしょう。このようなことを継続的に行う体制を作れるかどうか、これが一番大きな問題ではないかと思います。

牧: 非常に重要なご意見で、可能であれば、理想的なご提案だと思います。自分の立場で言わせて頂きますと、一番大事なことは何度もでていますように、アスベストの認識ですね。アスベストが危ないということが、飛散させてはいけないのだということの認識、これを徹底させることです。様々な場面を考えて徹底すること、少なくとも建設会社の関係や解体の方々には今迄の何倍も徹底しなければならない、という認識をもっております。

 あとは被災直後にどうするかという話がありますが、それは解体の世界だけではない部分があります。NPOのような方々や、一般の方々へ、平常時と違って、必ず大きな災害があればおそらくアスベストは飛散する一方ですので、注意や喚起をする必要があると思います。様々な阪神淡路大震災の教訓があります。例えば、神戸市や兵庫県で基準を作り指針を出した動きがありましたので、今後は阪神淡路大震災の時よりはもう少し迅速に動けるのではないかと思われます。平時からの情報提供と、一般の方に対してどうするかという仕組みを考えておく必要があると思います。

 他にも色々と有害物質というのは建物の中に色々あります。例えば、『建築物の解体に伴う有害物質の適切な取り扱い』というものを作りました。なぜ作ったかというと、去年(司会の)斉藤先生がNHKの番組でアスベストのことを取り上げられて、それをきっかけにして各省庁と大手のゼネコン関係者が集まって勉強会を開いてまとめたもので、一部80円で販売しております。この中でアスベストの問題を中心に扱っていますが、例えば電気の蛍光灯の安定器とかトランスなどにPCBが入っているという事実や、それから蛍光管でも結構水銀が入っていて有害でありますし、冷凍機のフロンガスや、ハロンを使用した消化設備、電池なども有害であります。こういう物でも、解体をする時に仕分けをして、最後にはリサイクルをしてもらうというのも重要な作業で、同じような問題を引き起こすことが考えられますので併せて周知をしたいと考えております。

 あと、今迄のお話の中で、事前除去という話がありましたが、事前除去は今、施主の意思でやっているというような実態があります。その中で法規制ということになると、例えば、いやがっているビルのオーナーさんに、多額の補助金まで払って事前除去をしていただくのか、ということです。それは私どもがやりたい、やりたくないという問題ではなくて、国民の税金を使ってそこまでする必要があるのかどうか、これは国民が自ら判断すべき問題ですので、色んなご意見をいただければと思います。

司会:  NHKのニュース解説で、アスベスト問題を取り上げた際、石綿がどのくらい使われているのかを 調べようとしたのですが、結局分かりませんでした。いろいろな面に聞いた 結果では、日本への輸入量から推測するしかないということでした。では輸入量はどの位かといいますと、一番多いときで年間35万トン、25万トン前後が10年から20年続きました。輸入したアスベストの大半は建物に使われていますので、輸入量から建物に使われたアスベスト量を推定すると今でも数百万トンのアスベストが建物の中に閉じ込められていると見られます。

 さらに問題なのは、そのアスベストがその建物に何処に使われているのか分からないということです。日本石綿協会に、何が問題でしょうか?と聞いたところ、『建物の何処に使われているかが分からないことが問題である』、と言われました。設計した人は何処に使ったかは分かりますが、ビルの所有者は分からない。また、そういう設計図や施工図は意外に残っていません。例え、もし分かっていたとしても、このビルは沢山アスベストを使っているということを公表すると、おそらく財産資産価値が落ちるので、高く売れなくなります。だから公表しないと思います。

 ではどうすればいいのか。私はNGOなりNPOがいわばコーディネーターとして、環境に非常に関心の高いオーナーを説得して、アスベストだけではなく、この建物は災害にどのくらい強いのか、建物の健康具合はどのくらいなのか、公表してもらう。そういう前向きなビルのオーナーを少しづつ増やしていくことが大切だと思います。具体的には、ビルの健康度合いとか災害危険度合いを示したシールを貼ってもらって、安全を売り物してもらう。そういう”競争”によってビルの健康度を上げていくことが重要だと思います。

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