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どのような対策が有効か?

外山尚紀氏(東京労働安全衛生センター)

 東京安全センターの外山です。今日は、石綿含有建材にどのような対策が必要かという話をしたいと思います。これさえやれば大丈夫ですよというのがあれば非常に楽ですが、残念ながらできることを一つ一つこつこつとやるしかない、始めから過度な期待は持たないでいただきたいということをお断りして話をしたいと思います。

 今までお話がありました、これは吹き付けアスベストの消費量です。これは環境庁が調査をしたもので、70年代前半に一つのピークがあった。吹き付けをこの頃たくさんされて、それが当然解体されるわけです。

 これが環境庁の予測した、吹き付けアスベストの排出予測です。70年代前半にたくさん吹き付けられたものの解体ピークは2010年です。まだあと6年後。今はまだ増え続けているところです。ピークは今からで、耐久年数によって違いますが、2010年-2025年くらいまでにピークがあります。まだまだこれからの問題であるということです。吹き付けアスベスト20数年前に使用されたものが、これから大きな問題になっていきます。

 今日のテーマは石綿含有建材ということですが、含有建材はどうかというと、ピークの時期は70年代で、その後吹きつけ石綿は禁止されて急激に落ち込んでいきますが、そのまま着工建築物の床面積でいうと横ばいできて、これは94年ですが、もう少し横ばいでいくと思います。このような形で使われて、ありとあらゆるものに石綿が入っていて、石綿消費量も最近減ったにしても、70年代ピークにしてそのままずっと横ばいできていると考えてよいと思います。吹き付け石綿に関しては、1955年から80年まで、2010年から2025年にピークがあって、年間3000トンから4000トンくらいというふうに環境庁は推測しています。大越さんのデータでは、これは15-6万トンという話です。政府は多少少なめで、14万トンくらいがこれからピークを迎えるということになります。問題の含有建材は、仮に2004年10月に全面的に禁止されたと仮定して、50年間使われたとすると、解体除去のピークは2010年、この始めはいいと思いますが、その後50-70年間、解体現場では石綿含有建材の粉塵が出続けるということになります。21世紀全般にわたって石綿対策はずっと続けなくてはいけないということです。この事実からは逃れられないだろうと思います。

 建設現場で石綿に曝露する可能性はどんなことがあるかというと、新築現場、これは今からだんだん少なくなると思いますが、問題は解体と改築現場。一つは吹き付け石綿の除去。これに関してはいろんな法律があって以前と比べ対策が進んできた。もちろん、吹き付け石綿に電気屋さんが天井裏に入って作業して曝露してしまうという事や改築時の吹きつけ石綿の事はまだ問題です。あとは石綿含有建材の除去等の問題です。

 ちょっと一つこの数字だけは覚えていただきたいんですが、アスベスト許容濃度というのを産業衛生学会が決めています。この値は発ガン率1000分の1ですから、1000人に一人は残念ながら発症してしまう可能性があるんです、この濃度にしても。この値が、クリソタイルの場合は0.1f/mlあたりということですので、ペットボトル1リットルに150本です。それより発ガン性の強いものに関しては、0.03f/mlあたりですから、ペットボトル1リットルに30本です。ごくわずかです。これだけの濃度の中で作業を続けると、1000人に一人の方は発ガンの可能性があるということです。このような細かい繊維が空気中1CCの中に0.1本、0.03本あると危険だということです。

 実際にいろんな場所の解体現場に行って石綿濃度の測定をしてきました。これは普通の工場ですが、この屋根裏に吹き付け石綿クロシドライトが入っているものがあります。これは作業が始まったばかりで、まだ大して粉じんが出ていませんが、仕事が進んできますとこのような状態になってきます。バールで壊します。この人たちはいわゆる内装解体工事業で、この仕事が専門です。これを壊した後に、吹き付け除去専門業者が来て、除去をします。ところが、この作業をするときに石綿が飛散しないわけがありません。バールを下から打ち付けて壊したり、直接ひっかけて引っ張る事もあります。天井は軽量鉄骨で吊っているので、その軽天を揺すったりすれば石綿が飛散します。

 測ってみて驚いたのですが、平均2.27f/ml、最大で5.04f/mlでした。この方々に個人サンプラーをつけていただいて6点計った平均ですが、先ほどの許容濃度に比べると160数倍です。ボロボロ状態になってしまいます。アスベスト、クロシドライトが飛散しています。このときの対策は、法的措置はないということで、吹き付け石綿と同等の扱いで除去してくれということを石綿対策全国連から環境庁に申し入れました。不可能な話ではないと思いますので、ぜひやってほしいと話したのですが、進んでいません。石綿含有建材を破砕する作業での動画をいくつかお見せします。

 これは硬いフレキシブルボードを破砕するところです。ものの数十分で天井を落としていきます。これも飛散します。これもフレキシブルボードです。それほど飛んでいないように見えますが、いろんな場所で測って、11点の平均で3.14f/ml、最大で6.4f/mlですから、200数十倍の石綿濃度です。

 それでは対策の話ですが、安全衛生の話の中では、まず第1に発生源対策をしましょう。第2に発生させてしまったものは、人が吸わないように吸じん装置などで飛散するのを防ぎましょう。第3に最後の手段として、保護具を使いましょう。この順番で対策を考えます。発生させないためには、ネジや釘をはずして破砕せずに解体することです。たまたま良い現場があって、大きな工場でスレートを手で一個一個ビスをはずして剥がしました。これは住民のみなさんが強くて、何度も工場に申し入れをして、ようやくこういう工事を実現させたという例です。有名な工場です。マンションの屋上から密かに撮ったんですが、足場をちゃんとかけて、上に人が乗って一個一個手でばらしている。これは良い例だと思います。

 発生源対策として、湿潤化して飛散を防ごうというのがあります。これは湿潤化しない例です。岩綿吸音板を除去する作業です。飛散しているのが見えると思います。さらに下に落ちて、再飛散しています。これをスプレーで飛散抑制剤というものを吹き付けます。湿潤化させます。それでこの後に壊しますと、見た目にもぜんぜん違います。多少粉じんは出ますが、先ほどと比べるとだいぶ少ないでしょう。対策無しの場合は2.46f/mlでしたが、0.8f/mlまで減らすことができました。0.8f/mlといっても許容濃度の数倍あるわけです。だからこれだけでよいというわけにはいきません。皆さんは当然マスクをしていますが、やはり養生して外に出ないようにして、中に入るときには保護具をする必要があるということになります。硬い建材はあまり濡らしても中に浸透しないので、濡らしても意味がないようです。そのときには養生します。これは対策無しで外に吹き出ている状況で、養生しますと当然中は高濃度になりますが外には出ません。少しはなれたところで石綿濃度を測って、1.3f/mlです。養生して、外で測ると0.15f/mlです。それでも10分の1まで下げられました。ですから手ばらしと湿潤化と養生というのを、状況に応じて使い分ける。そういったことで少しずつ下げていくことしかないのかなと。この3点であろうかなと思います。

 今日はたくさんの建設職人の方が見えて、こちらの会場の全建総連の東京都連も自分たちでできる改善を自分たちの手で進めていこうということが始まっています。日本ではあまり知られていませんが、世界的に安全衛生の世界で建設の健康被害、安全対策は非常に大きなトピックになっている話題です。来月マカオで全世界の監督官の会議が初めてアジアであり、そのテーマは建設です。法的なことだけでなく、どうトレーニングするのか、具体的対策をどうするか、かなり突っ込んだ議論がされるだろうと思います。ILOでも韓国政府がODAを出して東京都連のように参加型トレーニングをして、現場労働者の命と健康を守ろうという取組みが始まっており、アジアの中で広がっています。そういう意味で東京都連の取組みもこれから非常に大事で、粉じんに限らず建設で働く人の健康を守っていく貴重な取組みになると思います。以上です。ありがとうございました。



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