シンポジウム第1回 公共建築物の吹き付けアスベスト

基調講演「公共建築物と吹き付けアスベストの問題点」(1/3)

永倉冬史氏 (中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長)

司会: はじめまして。司会を務めます、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの名取です。初めの30分、中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長の永倉氏から、吹き付けアスベストの特に公共建築物における問題点について、講演をしていただきます。さらに、吹き付けアスベストの様々な問題について、6人のシンポジストの方から15分ほどお話いただき、問題点や特徴を皆さんに理解していただきます。その後、シンポジストの皆さんから今までの様々な活動を通してどのような提案をしたいかのご意見を伺い、会場の方からの質問などやりとりさせていただきます。今回は第1回ですが、今後、建材や地震や廃棄物の問題をとりあげる4回のうちの最初になります。それでは、最初の講演をお願い致します。

永倉: ただいまご紹介いただきました中皮腫・じん肺・アスベストセンターの事務局長の永倉です。今日は公共施設の吹き付け石綿(アスベスト)の問題についてお話致します。

 吹き付けアスベストと言いますのは、アスベストとセメントを機械で吹き付ける製品です。吹きつけ石綿(アスベスト)は1960年頃から日本では使用され始め、1975年に日本では公的に禁止されました。しかし吹きつけ石綿の禁止は、1970年前から行われてきた吹きつけ岩綿(ロックウール)の中に石綿を添加する形への移行をもたらしました。1975年〜1995年の間、「石綿=石綿を5%以上含有するもの」と定義されてきた事もあり、石綿含有吹きつけ岩綿(ロックウール)は5%以下なら石綿含有と言わないでも良かったのです。1980年までで吹きつけ岩綿(ロックウール)への石綿含有は中止されたとする書籍もありますが、実際には1988年頃まで吹きつけ岩綿(ロックウール)の一部は石綿含有でした。石綿含有の吹きつけとして、パーライト吹きつけ、ひる石吹きつけ、砂壁状吹きつけ、も知られています。

 昨年来の練馬区におけます小中学校など公共施設のアスベスト問題、これに関する写真がありますので、まず目で見ていただいてからお話をするのが分かりやすいのではと思います。練馬区での主要な吹きつけは、岩綿(ロックウール)吹きつけと言います。1990年代の岩綿(ロックウール)吹きつけは石綿(アスベスト)は含有されていませんが、1970年代の岩綿吹きつけは石綿を混ぜたものが多く、1980年代でも石綿含有の岩綿吹きつけも続いていたのです。練馬区の場合全体の中でのアスベスト重量は、1%から多い物で20%の物まであるようです。吹き付けアスベストと違って、ロックウール(岩綿)吹きつけの石綿含有か否かは、肉眼ではわかりくいと思います。よく見る石綿の含まれない白い岩綿吹きつけと、アスベストが含まれている岩綿吹きつけとは、見た目では違いがわかりません。判別が難しいですね。

 昨年練馬区のある小学校で、私と後でお話がある練馬区の池尻氏と施設課の方が、天井の吹き付け材(アスベスト含有)がボロボロになっているのを視察しているのが、次の写真です。

 ある小学校の吹きつけ岩綿(石綿含有)の天井の写真です。天井に無数に穴があいています。この下で子供達は勉強していました。私が乗っているところの下に掃除の用具入れのロッカーがあります。子供たちがロッカーから箒や柄の付いた長い物を出しては天井を突いていたのであろうことが想像できます。

 小学校の玄関の階段の下にあった、吹きつけ材(アスベスト含有)の写真です。触ると穴が開くものですから、子供たちが指や棒で引っ掻いたり、特に縁のところは高学年の子には届いてしまうのでボロボロの状態です。

 次の写真は天井に足跡がついているものです。いろいろな教室で足跡がついていました。どのようにしてつけたのか分からなかったのですが、子供に話を聞いたところ、高学年の子供三人が肩を組んで、真ん中の子が宙返りをして天井に足跡をつけるのだそうです。そういう遊びをやっていた時に子供たちはアスベストを吸っていただろうことが想像されます。

 蛍光灯との比較で傷の大きさが分かる様に撮ったものです。このくらいの大きさの傷が各教室に相当数あるという状況です。

 次は今までの写真の中で最もひどい例です。ブラシ状の物で天井の吹き付けロックウール(アスベスト含有)をこすってしまった跡です。多分天井のアスベストの煤の様な物を下からほうきやブラシで掃除したものだと思います。ブラシのような物でこするとアスベストが大量に飛散することが知られています。好意で天井を掃除してきれいにしようとしたなかで子供たちはアスベストを吸ってきたのだろうと思います。

 比較的分かりやすい写真だと思います。ボールをぶつけた丸い跡が天井に点々とありました。低学年の教室は比較的きれいでしたが、背が高くなる高学年の部屋になると、いろいろな形で天井にこのような跡が付いていました。

 天井の傷の近影ですが、下地のコンクリートが見えるくらい深い傷が付いていました。風が吹いたり、振動によりアスベストがある程度教室の中に漂う事が考えられます。

 今までの石綿含有吹きつけ岩綿(ロックウール)の写真と違っておりまして、吹きつけ石綿(アスベスト)と思われる中学校の倉庫です。この吹き付けについてはアスベスト含有が80%という測定結果が出ていますので、吹きつけロックウール(石綿含有)ではなく、吹きつけ石綿の除去を忘れた例だと思います。

 アスベスト吹きつけは早急に除去が必要だということで、練馬区も非常に早い対応で除去しようとしました。次の写真は、除去に際し天井に付いていた蛍光灯を先に外した所です。それから周りに養生と言い、粉じんの飛散を防止するよう対策を取ってから除去工事をするのです。実はこの前工事の段階でアスベストが飛散します。蛍光灯を外した取り口のネジを外す時にボロボロとアスベストが空中に出てしまっているのです。

 蛍光灯の真下の床に、このようなアスベストの粉が落ちているのです。このような粉を踏みつけたときにもアスベストが飛散します。ですから除去工事に取り組むことは良いのですが、前工事の段階から十分に注意をして養生を行い、作業者は使い捨て作業服や防塵マスクをする必要があるのです。

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