リスクコミュニケーションで飛散を防止した事例(5)

東府中某社宅解体工事に伴うアスベスト問題

2015年10月13日 永倉

 2015年5月25日、東府中にある某社宅解体工事からのアスベスト粉じんの発生が心配なので現地を見てほしいとの近隣住民からの相談があり、現地を訪れ住民の皆さんからお話を聞きました。当の社宅は4階建ての建物が2棟並んで、南側の近隣住宅9件、西側の近隣住宅2軒に敷地が接していました。また、東南側の敷地が接したところには保育施設があり、幼児たちが一日中保育されている環境でした。

 解体が予定されている社宅はベランダに緊急避難時に打ち破り隣に避難する隔壁があり、アスベスト含有建材で作られていました。また、ベランダの両端は一部壁で囲われ外付けの物入れのような部屋が作られているように観察され、その壁材がアスベスト建材である疑いがありました。また、周囲の壁の表面は、塗材で塗りなおされているように見えました。

 いずれにしても、すぐ近隣に子供たちが一日いる保育所があること、工事現場に接して一般住宅があることなど、アスベスト対策が極めて重要だと考えられる状況でした。

 5月27日、発注者(S不動産(株))と施工者((株)A)による住民への工事説明会があり、アスベストセンターはオブザーバーとして参加しました。また、住民からの要請があり府中市生活環境課の職員も参加していました。事業者の説明では、アスベスト事前調査は目視調査が行われ吹付けアスベストは使用されていない、一部成形板があるが関係法令・規則に従い適切に撤去処分するということだけでした。そこで屋上の防水シート、室内の天井の岩綿吸音板、外壁の塗材、配管類の保温材のアスベスト調査は行ったかを聞きましたが、これらについて一部は調査していたものの調査結果が示されませんでした。またアスベスト建材の種類と総量、撤去の時期、保管場所の明示、搬出時期、建材の廃棄の方法、廃棄場所等を聞きましたが的確な回答はありませんでした。そこで住民側はアスベスト建材の再調査、調査結果の説明を要求しました。他に工事中の騒音や振動の軽減対策について熱心に訴えました。

 6月2日、第2回工事説明会があり、前回の住民の要望を受け、追加でアスベスト分析が行われることが報告されました。

 6月10日、第3回工事説明会があり、6月8日住民側弁護士立会いの下に建材のサンプリング調査が行われ、追加された建材の内、外壁の外装塗材(アクリルリシン)と内壁材の裏側にあった内壁塗材からアスベストが検出されたと報告されました。これらの塗材は建物全体を養生シートで覆い、内部を負圧にして工事を行うと業者側が説明しました。

 7月7日、第4回工事説明会、7月21日、第5回工事説明会でアスベスト除去工事の詳細がつめられました。粉じんが周辺にもれないような防音パネルの高さが検討され、防音対策、振動対策なども盛り込んだ工事協定が検討されました。

 9月30日、10月3日には工事現場内覧が行われ、府中市生活環境課、東京都環境保全課立ち合いの元、アスベスト撤去工事直前の養生と負圧除じん機の設置状況、セキュリティールームの設置状況が住民に説明されました。工事は4階建て建物の周囲全体を養生で密閉し、周囲に負圧除じん機を設置し、内壁のアスベスト塗材を除去する際に各部屋ごとにさらに負圧除じん機の吸引パイプを設置、移動しながら局所ごとの吸引を繰り返すやり方です。この局所ごとの吸引で粉じんの滞留を解消するという工法です。

 この解体工事は、近隣住民の皆さんの強い連帯の元に、また隣接する保育園の園長さん保護者の皆さんのご尽力で、施主・事業者による工事説明会に毎回多くの参加者があり、活発な質問、意見などが交わされました。また、アスベスト撤去工事についてはアスベストセンターをオブザーバーに加え、事前のアスベスト調査から工事の詳細にわたる説明を求めたことで、施主・事業者はアスベスト工事の見直しを決断し、レベル3の工事にもかかわらずレベル1相当の工事を実現しました。またこの交渉ではアスベスト問題だけではなく騒音・振動などについても工事協定書を、弁護士を通じ取り交わしています。この協定書によって工事の安全性を確認し、また工事に協定に反することがあれば工事を停止し見直すことが出来ます。このような近隣の住民の皆さんの強い連携、リスクコミュニケーションが質の高いアスベスト除去工事を実現しました。また、工事説明会に最初から毎回参加した、府中市生活環境課の職員も、大変参考になったと言っていました。地域全体のアスベスト除去工事に影響を与えるリスクコミュニケーションの形成が成功した例と言えます。