神奈川県葉山町旧K学院大学セミナーハウス解体工事

The Risk Communication Cases

リスクコミュニケーションで飛散を防止した事例(4)

神奈川県葉山町旧K学院大学セミナーハウス解体工事

 2014年神奈川県葉山町にある旧K学院大学セミナーハウスの解体工事の事前住民説明会が開かれました。解体を請け負う事業者は建物のアスベストについて「この建物には飛散性の高いアスベストはありません」との説明をしましたが、それ以上の詳しい説明は行われませんでした。不審に思った近隣の住民は、葉山町のマリ・クリスティーヌさんに相談しマリさんからアスベストセンターに相談がありました。

 マリさんは阪神淡路大震災直後に神戸市にボランティアで入り、地元の小学校でアスベストの危険性のお話をし防じんマスクを配るなど、以前からアスベストに関する活動を行っています。

 マリさんからの連絡を受けアスベストセンターは5月13日、5月24日と葉山町に行き住民へのアスベスト講習会を開き、アスベストについての認識を共有しました。13日には講習会の後住民の皆さんと葉山町役場の都市計画課、道路河川課、総務課に行き、旧K学院大学セミナーセンター解体についてのアスベスト事前調査を適切に指導するよう要請しました。住民は神奈川県への要請もしました。県は6月1日大気汚染防止法が改正され、行政の立入調査権限が拡大したことを受け、不十分な事前調査で届出対象としていなかったセミナーハウスの建物の立ち入り調査を行い、届け出対象となるアスベストが使用された煙突内の保温材と配管のエルボー部分のアスベスト保温材も見つけました。これによって業者は工事を見直し、届け出をしアスベスト除去を正しく行うよう、県から指導を受けました。

 また、煙突のアスベスト除去工事の最中に塀を接した隣家の庭先で、アスベスト粉じん濃度を測定し、周辺へのアスベスト粉じん汚染がなかったことを確認しました。

 これは住民による熱心なリスクコミュニケーションが行政の立入調査を実現し、アスベスト飛散を起こしたであろう工事を未然に防いだ好例といえます。住民やNPOなどが協力し行政を動かしアスベスト飛散事故を防いだリスクコミュニケーションの事例です。