Proposition

2005年7月8日
中皮腫・じん肺・アスベストセンター

1. 石綿規制法令を守ることは、企業の最低限の義務である。

 石綿関連企業が守るべき石綿規制法令としては、じん肺法(昭和35年以降)、特定化学物質等障害予防規則(昭和46年以降)、大気汚染防止法(平成元年改正法以降)などがあります。

 これらの石綿規制法令を守ってさえいれば、全ての法的義務を守っていたことになるか、と言うと、それは全く違います。これらの規制は、誰もが当然に守るべき、いわば最低限の義務にすぎないのです。

2. 被害を予見できたならば、石綿関連企業には、被害を防ぐ義務がある。

 石綿関連企業は、石綿規制法令を守るだけでなく、民法上の義務を守る必要があります。この義務を守らずに被害を与えたならば、被災者に損害賠償をしなければなりません。

 民法上の義務には2種類あり、1つは従業員に対する義務で、雇用契約上の安全配慮義務というものです。もう1つは工場周辺の住民のように、企業と契約関係にない第三者に対する義務で、不法行為法上の義務です。いずれの義務も、アスベストのような生命、身体に被害を及ぼす物質を扱うときには、従業員や第三者に被害が及ばないように注意する義務がある、という常識的な考え方によるものです。

 これらの義務は、被害発生の予見ができて、被害の予防ができるときに生じます。アスベスト被害の予防は、お金をかけて、きちんとした対策をとれば容易ですので、これらの義務が、いつの時期に発生したかは、被害発生の予見がいつできたかにかかってきます。

 石綿関連疾患のうち、石綿肺は第2次世界大戦前から知られていましたし、肺ガンは昭和30年頃、悪性中皮腫も昭和35年頃からは予見が可能であった、と言われています。裁判例でも、石綿肺について、遅くとも昭和30年代前半には対策をとるべきであった、とする判例や、悪性中皮腫について、昭和40年頃に予見が可能であった、とする判例があります。

3. 問われるべき事実は何か。

 最近、石綿関連企業が石綿被害を公表することが相次いでいます。それら石綿関連企業が、鋭く問われなければならないことは、昭和30年代、昭和40年代、昭和50年代そして今日まで、石綿規制法令を守る以上の、どのような対策をとってきたのか、果たして、その対策が民法上の義務に照らし充分だったのか、ということです。

 仮に、不充分ということになれば、被災した従業員、周辺住民に対し、損害賠償をする義務を負うことになるのです。