「石綿リサイクル社会」の到来
 ー石綿をめぐる様々な課題ー

中皮腫・じん肺・アスベストセンター所長 名取雄司

 2010年は経済状況が改善しない中、既存石綿対策の遅れが目立った年となった。石綿則レベル1や2の吹付け石綿の杜撰工事が各所で行われ、当センターは埼玉や東京厚生年金会館、トーヨーボール等の工事で住民団体と共に弁護士も関与した交渉と訴訟支援を行った。特に石綿則レベル3の石綿含有建材が改築解体現場から十分分別されず建設リサイクル法により中間処分場を経由、再生砕石として販売され全国で発見されることを埼玉・神奈川の住民団体、東京安全センター、井部氏等と共に明らかにした。現状は「石綿リサイクル社会」の到来と言わざるをえない「危機的」状態だ。第三者の東京安全センターが工事現場を巡視、外部測定する協定という有効な対策の萌芽事案を昨年結べたのが希望だ。

 石綿関連疾患の相談では、2010年教職員の中皮腫の2事案が業務上となった。建築肺がんでは胸膜肥厚斑のある事例が認められ、肥厚斑のない事案は認められない傾向が続く。5月と11月の2回ホットラインを行い、11月は全国426件東京で148件の相談をうけた。中皮腫の相談は減少し石綿健康管理手帳の相談が増加、労災の継続的相談は年数10名単位となっている。地方公務員や援護局事案で行政の怠慢事案もあり今年厳しく追及したい。

 患者と家族の会の事務局では、毎月の機関紙発行、6月尼崎総会、隔月の役員スカイプ会議、隔月の役員会議の関西と東京交代開催も定着しつつある。

 省庁では、2009年末から環境省で石綿健康被害救済法改正の検討が開始され継続中で今年見直しとなるのか注目される。2010年4月環境省に連動し厚生労働省のじん肺の呼吸機能検査の改正があり喫煙歴等運営をめぐる問題が指摘される。昨年10月厚生労働省じん肺のデジタル標準写真導入が検討会報告書作成となり、今年CTの検討開始及びじん肺診査ハンドブック改正も予定され、1978年以降最大のじん肺及び石綿関連疾患改正となる可能性が高い。石綿関連肺がんの検討会も開始されたが認定要件を拡大する検討とは考えにくく、増加する建築の石綿関連疾患の補償の制限とならない準備と運動が求められている。2010年環境省は石綿廃棄物の二重袋内部の湿潤化を決めたが、検討時間も少なく実効性が乏しく問題が残った。環境省は2010年10月大気中石綿測定法と健康影響の検討を開始本年一定の成果を報告予定であるが、癒着のない第三者的機関による大気測定が必要だろう。国土交通省も今年WGの一定の報告が行われる予定で、公的な建物調査士の準備、石綿除去業の適正な施工の第三者評価の検討が期待される。ISOの分析の動向も注視したい。

 石綿関連図書の図書館への寄贈、マスクプロジェクト、学校石綿の課題、煙突等の調査等にも取り組んだ1年だった。

 訴訟関連では、建設国賠横浜地裁で昨年秋車谷・村山証人の尋問が行われ、泉南国陪は大阪高裁で弁論が開始され本年判決が予定される。建物による中皮腫の最高裁判決も本年予定される。行政肺がん訴訟の論争は本年山場を迎えそうだ。各地で企業に対する民事裁判の判決と訴訟が続いている。法律プロジェクトの先生方と共に今年も奮闘していきたい。

(2011年1月会報より)